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企業・業界レポート 第1回

誰も語らない ニッポンのITシステムと業界

インターネットが止まる日

2008年10月20日 05時00分更新

文● 清水真砂(構成)  聞き手●政井寛、企画報道編集部  協力●アスキー総合研究所 遠藤 諭

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インターネットだけではだめか

ASCII.jp:日本の企業は、セキュリティーや個人情報保護といったことには敏感になりますよね。ところが、インターネットが止まる日のことを考えているのかということですよね。

武藤:たとえば、銀行のATMでもインターネットを経由している場合もあるわけなんです。すると、お金を下ろしたいのに下せない。現金が出せないというのはかなり深刻です。列車の運行も、インターネットを利用するようになればかなり怖いですよね。

 韓国では実際にワームを原因として、インターネットもATMも利用不可能になったという事件がありました。丸2日間、国全体が機能停止の状態に追い込まれました。ウィルスは人為的なものですが、日本の場合はトラフィック・ジャムによって同じような事態が引き起こされるのではないでしょうか。

政井:悪意のある他人ではなく、ごく普通のユーザー自身によって引き起こされる?

武藤:全日空のシステムがダウンして、飛行機が半日欠航した事件がありました。システムがダウンしただけで飛行機を飛ばせなくなるんです。実際の飛行機があって、パイロットもいて、チケットを持ったお客さんがいて、天候も問題ない。じゃあ、乗せて飛ばせばいいじゃないか。でも飛ばせない。

ASCII.jp:昔なら飛ばせたかもしれないですよね。飛行機を発着させるのに取るべき手続きが関係者の中で共有されているならば、手作業であっても同じことができるはずですから。しかし、いまはそういうことがコンピュータの中でブラックボックス化している可能性がある。どんなにコンピュータが高度なことをやっているとしても、人間が、それを掌握していなければならないプロセスの骨格というものがあると思うのですよ。人智の限界領域というか……。しかし、それも放棄してしまうと話が違ってくる。

武藤:全日空の例はトラフィック・ジャムとは直接関係がないですが、「サーバーが止まったから」という理由でビジネスがストップするという事態は起こり得るわけです。

 企業ユーザーに向けてのアドバイスとしては、インターネットだけではだめだということですね。専用線なのか、ISDNなのか、別の手段を確保しておくことは重要です。特に近年はユニファイドコミュニケーションが進みIP電話の導入などが盛んですが、インフラをインターネットだけに頼ると、障害が発生した途端に電話もかけられないなんて事が起こります。「せめて電話ぐらいは」と思うなら、アナログ回線にしておいたほうがいいですよね。

ASCII.jp:アナログは、まず止まらないですからね。停電があった時代のロウソクみたいなもんですよね。

武藤:仮にインターネットがつぶれたとしても、何とかする方法はあるわけです。大事なのは、その準備をしているかということだと思います。

ASCII.jp:公衆パケット網のFEPの開発に関わっていたことがありますが、たとえば専用線のバックアップとして使われたりしていました。回線がいろいろ選べるのは今も変わらないのですが、インターネットは1つしかありませんよね。

武藤:いま進められているNGNも、全員がNGNなら意味があります。でも、相手側がインターネットだったらやっぱり問題です。

ASCII.jp:地球全体がNGN、ということは考えにくいですからね。

武藤:そもそもNGNの中でP2Pネットワークが築かれてしまったら同じになってしまいませんか? NGNのほうが早くていいのであれば、P2Pにとってもいいですよね。回線なのか、システムなのか、それとも人間がカバーするのか。方法はどうあれ、インターネットへの依存度が高まる中、結局100%安全は存在しないという前提で進めていくしかない。

政井:トラフィック・ジャムを避けるために、P2Pを法で取り締まるというような考え方はないんでしょうか?

武藤:それを望まない人はいると思います。少なくともプロバイダはやりたくないはずです。ユーザーは今度は通信を暗号化してきますから、プロバイダはその暗号化された通信を解読してチェックする義務が発生します。別のところでコスト負担になります。

ASCII.jp:インターネット自体がボランティアで運営されているわけですよね。今のインターネットの環境ではそれを言い出す人はなかなかいないのではないでしょうか?

武藤:もともとインターネットってナイーブなんですね。課金のシステムもない。使いたい人がいたらどうぞ、という発想。このままいくと、大きなトラフィック・ジャムが起きて、社会問題になって、それからでしょうね。日本は一回痛い目にあってそれから変わるという感じではないでしょうか。

次ページ「コラム:政井寛が斬る(2) なぜネットの脆弱性を知らない情報システム部門がいるのか?」に続く

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