ハードでは厳しい差別化
「ユーティリティ」で東芝らしさを演出
Netbookはコストパフォーマンス第一の製品だ。すべての仕様は、コストパフォーマンスの点から計算して決められる。
「dynabookでは行なっている、特別な堅牢設計や水に強くする設計なども盛り込んではいません。今のところ、これ以上薄く、小さくするための技術を盛り込むのはきびしい」(荻野氏)
「モバイルなので『PCカードやExpressCardを』という話もあったのですが、コストを考えると搭載できない。できるのは、USBなどの配置を工夫する、といったことくらい。もちろん、東芝内部の基準を満たしていますが」(原田氏)
東芝では、dynabook SSシリーズのような「高付加価値モデル」は自社工場で生産している。しかし、dynabook AXシリーズなど「価格重視モデル」は、海外のパートナー企業とともに設計・製造を行なう。いわゆるODM(Original Design Manufacturer)を利用しているわけだ。おそらくNB100は、後者の体制で製造されているものと思われる。
他方で、差別化要因として検討された仕様もあった。それは、12型ワイドパネルの採用だ。生産量の関係で、コストが安いためだが、「持ち歩くニーズが多いことを考えると、8.9型ワイドがいいだろう」という判断から、結局、他社のNetbook同様の8.9型ワイドに落ち着いた。
8.9型ワイドの液晶パネルでは、視認性が問題になるが、「その点は、他社よりは気をつかったつもりです」と荻野氏は自信を見せる。
別にパネルのクオリティーを変えたわけではない。同社のノートで使われている解像度変換ユーティリティー「SmoothView」を搭載して、任意に表示を拡大・縮小できるようにしている。
これに限らず、「ソフトを満載にするのはコンセプト的に違うと思いますが、あったほうがよいユーティリティーは搭載している」と原田氏は説明する。
光学ドライブは当然搭載されていないが、「USBで外付けドライブをつなげば、簡単にリカバリーディスクが作れるソフトも入れてある」(原田氏)。このあたりは、東芝のPCとしてのクオリティーを保つための工夫だろう。
また、ちょっと変わった特徴としては、Windowsが動作していない時もUSBから携帯機器に給電が可能な「USB給電機能」を備える、という点がある。「旅行時などに、PCを充電器代わりに使う方が増えている」(荻野氏)ためだ。
バッテリー駆動時間重視のモバイルノートにはあまり見られない仕様だが、A4型ノートでは多い。この点からも、Netbookが「持ち運び用ではあってもモバイルとは少し違う」というところが見えてくる。
NB100が市場でどのように支持されるかは、東芝自身も非常に興味深く見守っている。「初心者向けと勘違いされることが一番怖い」という荻野氏が話すように、まだまだ模索中の市場でもある。
コスト重視で差別化が難しい中、国内大手メーカーはなにをすべきなのか。そして、それをユーザーはどのように受け止めるのか。NB100は今後の「PCの売り方」を計る、試金石となる可能性が高い。
NB100 の主なスペック | |
---|---|
CPU | Atom N270(1.60GHz) |
メモリー | DDR2-533 1GB |
グラフィックス | Intel 945GSE Expressチップセット内蔵 |
ディスプレー | 8.9型ワイド 1024×600ドット(LEDバックライト) |
HDD | 120GB |
光学ドライブ | 搭載せず |
テレビ機能 | 搭載せず |
無線通信機能 | IEEE 802.11b/g |
サイズ | 幅225×奥行き190×高さ33mm(最薄部29.5mm) |
重量 | 約1050g |
バッテリー駆動時間 | 約2.9時間(JEITA測定法) |
OS | Windows XP Home Edition SP3 |
予想実売価格 | 7万円半ば |
筆者紹介─西田 宗千佳
1971年福井県生まれ。フリージャーナリスト。 得意ジャンルは、パソコン・デジタルAV・家電、そしてネットワーク関連など「電気かデータが流れるもの全般」。主に取材記事と個人向け解説記事を担当。朝日新聞、読売新聞、アエラ、週刊東洋経済、月刊宝島、PCfan、YOMIURI PC、AVWatch、マイコミジャーナルなどに寄稿するほか、テレビ番組・雑誌などの監修も手がける。近著に、「美学vs.実利『チーム久夛良木』対任天堂の総力戦15年史」(講談社)がある。
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