身につける端末ゆえの利点をさらに活かす
「リアルとサイバーの融合」という観点では、辻村氏は携帯電話がパソコンと異なり、常に1人1人が持ち歩くものであるという身近さを利用した「生活支援」のサービス展開を説明した。
例として説明されたのは、おさいふケータイを軸とした、NTTドコモと日本マクドナルドによる新しいマーケティングの取り組みだ。
利用者個人個人に特化したマーケティングを望んでいたマクドナルドのニーズを、携帯電話を使って実現しようという企画で、両社が昨年共同出資して設立した新会社を通じて行なわれる。具体的には、おさいふケータイを活用して会員証を発行し、割引クーポンを会員の携帯電話に発行する。会員はクーポンを利用してマクドナルドの商品を買う際に、店頭のリーダーに携帯電話をかざして購入する。これにより、会員がいつ、どこで、何を買ったかといった購買動向が、容易にデータ化できる(もちろん、会員側の同意を事前に得ておく必要がある)。
現在は紙のクーポンで行なわれるのが一般的だが、この方法は印刷物の用意などもあって、準備から実施まで数週間かかるという。また、事前予測を上回るほど好評でも、急遽追加するというのも難しい。デジタルデータなら、こういう時間や機会の損失は最小限に抑えられる。「土日の売れ行きを見て、翌週には反映できる」(辻村氏)。
さらに将来的には、携帯電話上で事前にオーダーを選んでおき、店頭では端末をかざすだけでオーダー、電子マネー(iDなど)で支払うといった購買方法も可能になるという。オーダーに要する時間が短縮できるほか、会員の購買履歴がより詳細に把握できるため、マーケティングでの活用手段は幅広い。
辻村氏は将来のプランとして、携帯電話上でエージェント機能を実現したいという展望を語った。処理自体はサーバー側で行なうということで、前述の高速化によるシンクライアント的サービスの実現は、ここにも関わってくるわけだ。
携帯電話向けOSは幅広く ソフトウェア開発の負担も軽く
「グローバル化」のテーマでは、携帯電話向けOSと、ソフトウェア開発負担の軽減が注目された。現在、NTTドコモの端末はOSとして、Symbian OSとLinux、数は少ないがWindows Mobileが使われている。また近い将来には、Goodleの携帯電話向けOS「Android」を採用した端末も登場する見込みだ。
端末・OSの共通化とオープン化の流れに、NTTドコモも乗っているわけだが、端末メーカーを悩ませているのが、ソフトウェア開発コストの増大だ。特に、日本の携帯電話はその先進性と閉鎖性ゆえ、流用しにくいソフトウェアに、多くの開発コストを取られるという問題が指摘されている。
そこで、携帯電話向けソフトウェア開発の負担を軽減すべく、携帯電話上のソフトウェア構造の変革を行なうという。
大まかに言うと、NTTドコモに固有のソフトウェア部分を「オペレータパック」として分離。端末上で動くOSやメーカー固有部、キャリア依存しない汎用アプリケーション部などと別個にすることで、同じ端末とソフトウェアを可能な限り複数のキャリアで利用可能にしようという概念だ。
辻村氏はこの方式の利点として、開発コスト低減のほかに、国内メーカーの海外進出を促進するほか、海外メーカーのNTTドコモ参入も容易にするとしている。2009年後半に登場するとのことだ。
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