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松村太郎の「デジタルとアナログの間」 第2回

松村太郎の「デジタルとアナログの間」

TypeTrace

2008年10月07日 18時00分更新

文● 松村太郎

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現代の生原稿


 '08年2月に東京都写真美術館で行われた「文字の感触」展では、「TypeTrace」と作家・舞城王太郎氏とのコラボレーションが展示された。大スクリーンに、舞城氏の作成したTypeTraceデータが再生される。遠藤氏はこれを「デジタル時代の生原稿」と表現した。

──作家本人やそれに編集者を加えた戦いの歴史、痕跡が詰まった生原稿の持つ迫力に圧倒された経験がある。100年後に、現在の作家の生原稿を見ることはないだろうが、もし作家が「TypeTrace」で作品を書けば、とても貴重な資料になるはずだ(遠藤氏)。

 舞城氏は、ウケを狙って一度書いたことを消したあと、改めて作品としての文章を書く、といった「TypeTrace」のワザを披露していた。「執筆を魅せる」表現が生まれた瞬間である。

──いまは「TypeTrace」ウェブ版の開発作業をしているところ。このサービスでは、かなり高度な分析を実装していくつもりだ。カタカナや漢字の比率、デリート頻度、コピー&ペースト率などのデータを蓄積、解析して文章を分析する機能を持たせていく。そういったデータを生かして、長く使うほどそれぞれの痕跡やクセがたまり、思考へフィードバックが生まれる──そういうところまで持っていきたい(遠藤氏)。

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現在開発中のウェブ版「TypeTrace Allonge」の画面

 この開発のために同社に加わったのが、イラストの執筆をそのプロセスとともに共有できるウェブサービス「noughts」の開発者・山本興一氏。同社の共同設立者で、初期から「TypeTrace」を支えているドミニク・チェン氏らとともに彼らが目指すのは、人間の進化を支援できるデジタルツールを開発していくことだ。

──「TypeTrace」もそうですが、ウェブ版についても、既存の技術を「TypeTrace」とマッシュアップさせることによって、「TypeTrace」だからこそ記録することができ、長く使えば使うほどユーザーにフィードバックの起きる仕組みを開発していきたいと思います(山本氏)。

ウェブサービス「noughts」のトップページ。画面に並ぶイラストをクリックすると、その描画プロセスが再生される


(次ページに続く)

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