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時事ニュースを読み解く “津田大介に聞け!!” 第26回

変わる著作権者の意識 本当の「創作振興」とは?

2008年09月30日 15時45分更新

文● トレンド編集部、語り●津田大介(ジャーナリスト)

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長生きするクリエーターほど保護される


── もし来年、小委員会が開かれるとしたら、若い世代のクリエーターや受け手の声を代弁する人など、もう少し広範囲から委員を選ぶことはできないんでしょうか?

川上量生氏

ドワンゴ代表取締役会長、川上量生氏。写真は3月に開かれたJASRACのシンポジウムにて撮影したもの

津田 いろいろな立場の方をゲストに呼んでヒアリングすることは今でもやっています。ただ、とにかく著作権ビジネスに関連するステークホルダーが昔とは比べものにならないくらい多様化してます。委員の顔ぶれのリニューアルということもあるでしょうし、ヒアリングの対象を増やした方がいいだろうなとは思いますね。

 前々回の会合では、ドワンゴの川上さん(代表取締役会長、川上量生氏)や、早稲田の境さん(大学院国際情報通信研究科客員准教授、境真良氏)が呼ばれて、若年層のコンテンツに対する姿勢やコミケと同人作家など、コンテンツビジネスの現状について分かりやすく説明していました(議事録はこちら)。

 彼らの発表に対して権利者側からもうちょっと文句が出るのかなと思いましたが、そんなことはなく、現状を踏まえて新しいフェーズに以降しなければならない……そんな考えになってきているような印象も受けました。


── 保護期間は結局、どうあるべきでしょうか? 津田さんの個人的な見解を教えてください。

津田 死後50年という現行の保護期間は、寿命の長いクリエーターほど長く保護されるわけですから、元々不公平な仕組みですよね。

 個人的にはすべての著作物は映画のように公表時起算にし、公表後20〜30年もあれば十分だと思っています。DRMもコピー制御ばかり注目されますが、本来はそういうメタ情報の管理に使われた方が有用じゃないかと。

 とはいえ、公表時起算にするのも保護期間を50年から短くするのも、著作権の国際条約である「ベルヌ条約」で定められている最低保護期間を逸脱してしまうわけですから、今すぐ変えるというのも現実的ではない。どうせ今でも十分に長いのですから、保護期間は今のままにしておき、むしろ保護期間内でどうクリエイターに適正な収入が還元できるか、その流通方法を考えた方が建設的です。

 ここ2年、保護期間という問題を中心にさまざまな場所で議論してきたことで、いくつもの問題点が浮き彫りになってきました。ここから先は、浮かび上がってきた問題点をどう解決していくかがテーマになるでしょう。今回の保護利用小委で出された権利者不明の著作物の流通促進もそうでしょうし、来年の国会で成立する見込みの高いフェアユース(著作物の公正利用)もそうした議論の延長線上にあるのだと思います。むしろ議論はこれから「本格化」するんだと思います。


筆者紹介──津田大介


インターネットやビジネス誌を中心に、幅広いジャンルの記事を執筆するジャーナリスト。音楽配信、ファイル交換ソフト、 CCCDなどのデジタル著作権問題などに造詣が深い。「著作権保護期間の延長問題を考えるフォーラム」や「インターネット先進ユーザーの会」(MiAU)といった団体の発起人としても知られる。近著に、小寺信良氏との共著 で「CONTENT'S FUTURE」。自身のウェブサイトは「音楽配信メモ」。



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