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松村太郎の「ケータイが語る、ミクロな魅力」 第40回

ノキア流「もの作り」のスゴさが分かるNM706i

2008年09月25日 18時20分更新

文● 松村太郎/慶應義塾大学SFC研究所 上席所員

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1つ1つの行動に敬意が払われたケータイ

 チップチェイス氏が日本を拠点に人間行動に着目した研究をしている点もまた、海外から洗練されたケータイカルチャーを持つ国だと認識されていることがうかがえる。NM706iは、キーワードは「都市への理解」と「女性」がキーワードとなった。

チップチェイス氏が世界中で撮った写真の一部。イスラム文化圏ではイスラム教の祈りの時間表をケータイの端末で確認する

アジアで撮った街角の風景。このペットボトルにはガソリンが入っている。つまり、セルフのガソリンスタンド

 「日本では極限までの個人化が進んだ都市生活を形成しています。朝の通勤風景を見ていても、ベトナム・ホーチミンシティの通勤と、日本の発達した都市交通を利用した過密な通勤風景では全く違い、またそのシーンでの情報端末の使われ方も違います」(チップチェイス氏)

日本の象徴した風景として過密な都市交通環境や密集した町並みをあげた

 日本の通勤風景を見ると、電車では座れない人がほとんどで、立っている人はつり革や手すりにつかまりながら、片手で新聞や本を読んだりケータイを触ったりしている人が多い。その場合、両手でしか使えない端末は、いくら画面が大きくて入力がしやすいとしても、なかなかうまく使うことができない。

 また端末をしまう場所にしても、鞄の中なのか、ポケットがいいのか。女性の多くは鞄の中にケータイをしまっているが、電車の中ではジャケットのポケットに入るコンパクトなサイズならば、片手しか使えない状態でも取り出しやすい。

 このように1つの生活シーンを考えてみても、端末のデザインに対するアイデアが出てくる。チップチェイス氏は、シャドウイングという、特定の人物の1日中の行動追跡を行なう手法を使って、これらの都市生活におけるケータイの使われ方を観察している。

 「朝起きてから夜寝るまでのあらゆる状況を対象として観察します。あらゆる行動に敬意を払い、人が行なうすべてのことに興味を持って取り組む必要があります。どこで観察をやめればいいのか、という問題もありますが……」(チップチェイス氏)

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