月刊ビジネスアスキー 2008年11月号掲載記事
ソフトバンクは4月、中国のネットベンチャー企業OPI(オーク・パシフィック・インタラクティブ)へ資本参加し、傘下に収めると発表した。その意図はどこにあるのだろうか。
このオーク・パシフィック・インタラクティブ(中国名は千橡互動)は、早い段階でウェブ2.0的なサービスを提供した企業として知られる。同社はポータルサイトやオンラインゲームなどのサービスを運営しているが、ソフトバンクが注目したのはSNS「校内網」だ。
校内網の登録者数は約2200万人。かなり大きな数字に見えるが、中国のインターネット人口は2億5000万人を超えており、まだ10分の1にも達していない。その分、利用者が何倍にも増える可能性を秘めているとも言えるが、校内網は米国発の巨大SNS「Facebook」(フェイスブック)にそっくりで、独自性は感じられない。
3Gの普及を見越した先行投資
このサービスの何に魅力を感じたのか。ソフトバンクの孫正義社長は8月冒頭、中国・杭州で開催された「第2回APECアジア太平洋中小企業峰会」に出席した。
その席で孫氏は、日本では3G(第3世代)や3.5Gの携帯電話が普及しているために、SNSへのアクセスはパソコンでなく携帯電話からが主流であること。SNSに限らず、今後インターネットへのアクセスは携帯電話からがメインになると語った。
日本では今や当然とも言える流れだが、一方で中国の携帯電話はGSM方式、つまりいまだ2Gが主流だ。北京五輪に合わせて、北京などの一部の都市でようやく中国版3Gこと「TD-SCDMA」のサービスが開始されたが、普及はまだまだこれから。
しかし、中国もいずれ3Gが主流になるのは間違いない。そのインフラが整う前に、そして携帯電話からネットへのアクセスが一般化する前に、いち早く将来の人気サービスを傘 下に収めておくというのが孫氏の狙いだろう。
こういった先物買い戦略には前例がある。ソフトバンクは2000年、中国「アリババホールディングス」に出資した。同社は企業間取引サイト「アリババドットコム」や個人向けECサイトの「淘宝網」、そして「ヤフー中国」などを抱える。
中国でもオンラインショッピングはここ1~2年で急拡大し、最近ではサラリーマンやOLが副業でオンラインショップを運営するといった話を聞くようになった。だが、ソフトバ ンクは8年も前にアリババに出資し、昨年11月にはアリババ子会社の上場によって、数千億円規模の含み益を得ている。
孫氏は中国メディアに対して、「10年前はアメリカに、5年前は日本に投資した。今後は中国へ投資をシフトする」と語っている。今回の買収を先駆けとして、中国での先物買い投資戦略をさらに活発化させると見られる。