便所の落書きとビッグマウス
冒頭で「中国の掲示板の書き込みは幼稚な内容、非論理的な書き込みが多い」と書いた。例えば日本絡みのニュースが出れば、「日本製品不買!」「東京をぶっ潰せ!」といったコメントが毎度毎度よくも飽きないものだと思うほど出てくる。
その反面、感心するような、言い換えれば自分の考えの範疇を超えた目の覚めるようなコメントにはなかなか出会えない(自分の考え方の範疇に収まる無難な分析のコメントはよくある)。
2ちゃんねるをはじめとした日本の掲示板はしばしば「便所の落書き」と形容される。しかし、仮に便所の落書きだったとしても、文章のキャッチボールをするだけ「便所の落書き」度は低い。
また、中国のインターネット利用者にはビッグマウスが少なくない。オンラインでなくともビッグマウスな若者にはよく出会う。例えば「あなたは中国から出てきた新規格の製品を買いますか? それとも日本や欧米の世界的な規格の製品を買いますか?」という質問には、まず間違いなく過半数が中国を支持する回答を選ぶ一方、数ヵ月後の購入者調査ではまったくといっていいほど誰も中国の製品を買ってない、という結果となるのがもはやお約束となっている。
その例は筆者ブログの「愛国者」に関する記事(関連エントリー)や、中国3G規格「TD-SCDMA」に関する記事(関連記事)を見ていただければ分かる。
甘やかされ、愛国教育を受けた「憤青」
これら過去の例を踏まえ、多数の中国人に対し「なぜ大口を叩くのか」という質問をぶつけてみた。出てきた結論は「何も考えないで、その場の勢いと感情でモノを言うからだ」というものだった。掲示板においても鋭いコメントが稀少なのは、その場の感情や勢いでコメントを書き込むことが習慣となっているからだ。
加えて2億5000万人を超える中国のインターネット利用者の内訳は10代中盤から30代前半までの若い世代が大半を占める。その世代はまた、一人っ子政策が始まって兄弟がいない世代であり、小皇帝と呼ばれ、家族親族に溺愛され大して叱らることなく自信過剰に育った世代でもある。
愛国教育を受けた世代と言われ、ときに強硬で理不尽な書き込みをすることから、中国のインターネット上では「憤青」と呼ばれ、理性ある一部のインターネット利用者から嫌われている(憤青に関しては日本語のWikipediaにも書いてある。興味があれば読むことをお勧めする)。
中国をコピー天国と揶揄する文章は日本でもよく見かける。ただし、データをタダで拝借するのは、何もソフトウェアや音楽映像データの海賊版だけの話ではない。各人にしみこんだコピーの習慣が、ブログや掲示板というCGMツール上でも展開されることで、考えるチャンスを自ら放棄している現状があるというのは言い過ぎだろうか。
山谷剛史(やまやたけし)
フリーランスライター。中国などアジア地域を中心とした海外IT事情に強い。統計に頼らず現地人の目線で取材する手法で,一般ユーザーにもわかりやすいルポが好評。当サイト内で、ブログ「中国リアルIT事情」も絶賛更新中。最新著作は「新しい中国人~ネットで団結する若者たち」(ソフトバンク新書)
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