塩澤一洋の“Creating Reed, Creative Mass.──大公開時代の羅針盤” 最終回
塩澤一洋の“Creating Reed, Creative Mass.──大公開時代の羅針盤”
公開の価値
2008年11月02日 15時00分更新
現代は、こういった法制度と技術の両輪によって、著作物を公開しやすい時代だ。創作したい人が思い思いに表現し、それを安心して公開できる。それらの著作物がネットを通じていつも身近にあり、ネットにさえつながれば誰でも好きなときに無償で見られる。
創作→表現→公開→鑑賞→創作→……という創造的サイクルのなかで、最大のキーポイントは「公開」である。ヒトは、知的な頭で創作し、それを器用な手や口を使って表現する。それは憲法21条(条文)が「表現の自由」を保障するまでもなく、ヒトの本源的な営みである。また21条が同時に「言論・出版の自由」も保障するように、表現したものを人に伝えたり、多くの人に見てもらいたいと願うのも、社会的動物としてヒトの自然な欲求だ。
その際、大きな社会で著作物を公開する不安と躊躇を払拭し、安心して公開できるようにする仕組みが著作権法だ。それによって多彩な作品が世に送り出され、人々がそれを鑑賞し、新たな作品の創作につながっていく。
大公開時代。個々の表現を尊重し、互いを尊敬しあえる心の豊かな温かい社会であり続けることを願う。
筆者紹介─塩澤一洋
「難しいことをやさしくするのが学者の役目、それを面白くするのが教師の役目」がモットーの成蹊大学法学部教授。専門は民法や著作権法などの法律学。表現を追求する過程でMacと出会い、六法全書とともに欠かせぬツールに。2年間、アップルのお膝元であるシリコンバレーに滞在。アップルを生で感じた経験などを生かして、現在の「大公開時代」を説く。
(MacPeople 2008年6月号より転載)
この連載の記事
-
第23回
iPhone/Mac
教養のチカラ -
第22回
iPhone/Mac
失敗の創造性 -
第21回
iPhone/Mac
肯定力 -
第20回
iPhone/Mac
自分と相手のエンジョイ -
第19回
iPhone/Mac
創造的Leopard -
第18回
iPhone/Mac
著作権法をポジティブに -
第17回
iPhone/Mac
写真は未来を写す -
第16回
iPhone/Mac
デジタルの時間軸 -
第15回
iPhone/Mac
音楽・写楽・楽校・楽問 -
第14回
iPhone/Mac
DRMのない音楽配信 - この連載の一覧へ