塩澤一洋の“Creating Reed, Creative Mass.──大公開時代の羅針盤” 最終回
塩澤一洋の“Creating Reed, Creative Mass.──大公開時代の羅針盤”
公開の価値
2008年11月02日 15時00分更新
「公開」こそ文化の発展の要。作品を次の創作につなぐ掛け橋
著作権法は、多様性を伸ばす法律だ。イラスト、写真、映像、日記、エッセイ、音楽、工作、ブログ……。人々が思いを自由に表現した作品がひとつでも多く世の中に公開されれば、社会の目に触れる作品の数が増える。その内容は多岐にわたり、ひとつひとつが作者の個性を反映していてバラエティーに富む。このバラエティーを膨らませていくことこそ、著作権法が望むところだ。
著作権法1条(条文)が究極の目的として掲げる「文化の発展」とは、そういった文化的豊かさの増進を意図している。その目的を実現するため、ひとつひとつの作品に対する権利を設けるとともに、社会が作品を適正に利用できるように制度設計する。これによって、作者が安心して作品を公開でき、世の中に公開される作品(=著作物)が増えていく。そのインフラこそ、著作権制度である。
その背景にあるのは、国民ひとりひとりを尊重しようとする憲法13条(条文)の精神だ。著作物とは、作者の心の中にある思いを表に現したものだからである。
もし著作権法がなかったら、せっかく表現した作品を誰かに盗用され、その人の作品だと主張されてしまう危険性がでてくる。作者はそれを恐れて、作品の公開を躊躇するだろう。すると、世の中に公開される著作物の数が少なくなってしまう。
人々が鑑賞できる作品のバラエティーが限られて、文化的貧困に陥ることになる。従って、作者が安心して作品を公開できるインフラを整備することこそ、文化の発展に不可欠だ。著作権法はその重責を担う法制度なのである。
(次ページに続く)
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