塩澤一洋の“Creating Reed, Creative Mass.──大公開時代の羅針盤” 第23回
塩澤一洋の“Creating Reed, Creative Mass.──大公開時代の羅針盤”
教養のチカラ
2008年10月26日 15時00分更新
英語に限らず、韓国語、ロシア語、中国語、タガログ語、クメール語など何語であっても同じこと。自分と背景を異にする人々とコミュニケーションでき、自分の理解の幅を広げるとともに、相手の理解に資することができる。
たとえば自分の意図を写真で表せるようになると、その写真を見る人に、自分の思いを伝えることができる。自分のイメージを絵画で描写できれば、それを相手の心に描くことができる。同時に、相手が撮った写真、描いた絵を通じて、相手の考えを理解できる。
たとえばピアノが弾けると、自分の感情を音に乗せて、相手に伝えることができる。同時に、相手の音楽による表現を聴いて、その人の感情を受け止めることができる。
たとえば料理で気持ちを表せば、それは相手に伝わるし、相手が作った料理の真意も味わえる。
たとえばカメラの操作性をよくするためにボタンの配置を工夫すれば、ユーザーにその意図が伝わる。同時に、別の人が作ったカメラのボタン配置に込められた意図を、くみ取ることができる。
たとえば利用者からアンケートをとるためのウェブサイトを設計するとき、どのような順序で何をどう問いかけたら答えやすいかを考えてインターフェースを作れば、利用者がそれを理解して、スムーズに回答を進めることができる。同時に、別のアンケートサイトの作り手の意図を読み取ることもできる。
教養とはかように、より多くの「言葉」を持つことである。言語的な言葉のみならず、音楽的な言葉、絵画的な言葉、映像的な言葉、工業製品的な言葉、ウェブ的な言葉──。相手とのコミュニケーションを実現するさまざまな「言葉」「接点」、あるいは「チャンネル」をより豊かに持つことが、「教養」を広げるのである。
自分が作ってみることによって、作り手の気持ちを理解でき、自分が表現することによって、相手の表現意図を受け止められる。だから自ら作ってみるし、自ら表現してみる。それが教養を育む道である。
(次ページに続く)
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