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塩澤一洋の“Creating Reed, Creative Mass.──大公開時代の羅針盤” 第21回

塩澤一洋の“Creating Reed, Creative Mass.──大公開時代の羅針盤”

肯定力

2008年10月12日 15時00分更新

文● 塩澤一洋 イラスト●たかぎ*のぶこ

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肯定系が広がれば社会の創造性が伸びていく


 英会話の教室では、よく次のようなアドバイスがなされる。「英語で話すときはできるだけ否定表現を避け、肯定形で表現するほうが英語らしい」

 実際、英語で会話するときには、想像以上に肯定形、いや「肯定系」で意見を述べることが必要だ。否定語を使って話をしても、ネイティブな英語人には理解すらしてもらえない場合もある。

 それは単に「not」の使用を避けるといった単語や文章のレベルだけのことではない。表現の背景にある思考様式の肯定性を必要とするものだ。

 たとえば先日、米国の友人から次のようなエピソードを聞いた。実際はかなり生々しい話なので、場面設定を変えて紹介しよう。

 ある小さい企業内で、次に作る製品のコンセプトに関する意見募集が行われた。その意見の中に、「Xではない製品がいい」というものがあった。Xとは、現在その会社の主力製品の多くに共通するコンセプトだった。

 社長はこの意見にひどく失望した。現在の自社製品のラインアップに対する否定と感じたからである。否定するということは、それだけ強い意味を持つのだ。

 実際この意見を書いた人は単に、「いままでとは異なるコンセプトの製品を出すべき時期に来ている」ということを言いたかったのであって、現在売れている商品を否定しようという意図はまったくなかった。しかしそれをそのまま否定表現で伝えてしまったことが、このような誤解につながったのである。


(次ページに続く)

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