塩澤一洋の“Creating Reed, Creative Mass.──大公開時代の羅針盤” 第20回
塩澤一洋の“Creating Reed, Creative Mass.──大公開時代の羅針盤”
自分と相手のエンジョイ
2008年10月05日 15時00分更新
「受験までの残り少ない期間、どんなふうに勉強したらいいですか?」
各教科の勉強方法に関する質問なら具体的な方策を示せるが、この質問は漠然としている。そこで私はシンプルに「一番大切なのは、楽しくやることです」と答えた。
それを聞いた受験生は、かなり驚いた様子だった。
「受験勉強を楽しくやる……ですか!?」
「そうです。ぜひ楽しくやってください。もしどうしても楽しくないなら、道はふたつ。自分で楽しくする工夫をするか、やめるか。どちらかです」
「……」
「大学生になったらどんなに楽しい生活が待っているか、たとえばこの学園祭を見て、想像してください。たくさんの出会いがあったり、未知の分野を研究したりして、世界が大きく広がります。ワクワクするでしょう? そうしたらそれにつながる受験勉強も楽しくなるはずです。もし本当に楽しくないのであれば、受験勉強なんてやめたほうがいいと思います。大学に行く以外に、楽しい人生はたくさんありますから」
なにかを行うとき、楽しくやるのと嫌々やるのとどちらがいいだろう。嫌々やれば、気持ちは後ろ向き。入ってくるはずの情報も入ってこない。気付くはずのことにも気付けない。身に付くはずの能力も身に付きにくい。とても損なやり方だと思う。
では、がんばってやるのはどうか。「がんばる」という背景には、「つらい」「苦しい」「嫌だ」といったマイナスの感覚があって、それを払拭しようとする努力が「だけどがんばる」となって表れるのではないか。それは嫌々やるのと効果において大差ないように感じる。
同じやるなら楽しくやろう。楽しくないなら楽しくしよう。自分の気持ちを盛り上げたり、興味を喚起して、楽しくなるような工夫をしよう。その工夫自体も楽しもう。そうすれば、同じ時間を何倍にも有効に使えて、得るものも大きい。楽しくやれば身に付く。第一、気分がいい。つまり「楽」なのだ。がんばる必要などない。
(次ページに続く)
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