ハイエンドユーザーのため?
水冷システム用メンテナスホール
今回はクーラーマスター台湾本社と日本支社の協力により、ケース本体とは別に“同社唯一の選択肢”である水冷オールインワンキット「Aquagate Max(RL-HUB-KBU1-GP)」(http://www.coolermaster.co.jp/cmjproductcooler/aquagatemax.htm)を借り受けた。
その理由は「HAF 932」には上面部に水冷システム用メンテナンスホールがあるから。これは冷却水を容易に補充できるというもので、プラス材料のギミック項目として装着テストを試みたかったからである。自社同士の製品だけに問題もなかろうと思っていたのだが、しかしここには意外な落とし穴が待っていた。
このように、物理的干渉や注入口の位置違いなど、他社製品同士ならともかくリリース間もない同一メーカーモデルの結果としてはお粗末と言わざるを得ない。以上の装着結果から、冷却水用メンテナンスホールは“あくまでも改造が出来るスキルを用いたユーザー”に与えられたギミックであり、過度の期待は禁物。同社製の「Aquagate Max」が使えないということは覚えておいたほうがよいだろう。
※:編集部注:この物理的干渉についてクーラーマスターに問い合わせたところ、以下のような回答が得られた。
「欧米のコアなゲームユーザーの間では空冷より水冷が主流となっており、ユーザーがケース自体に冷却液補充用の穴をあけてメンテナンスを容易にする改造が流行しています。『HAF 932』の水冷システム用冷却補充ホールは、そのようなコアユーザーのニーズに応えるように設計しました。欧米のユーザーがよく穴をあける場所を参考にしたため、自社、他社を問わずオールインワンタイプの水冷キットの場合、穴が合わない場合があります」
以上のことから、「HAF 932」は“ゲーマー向け”に開発しているため、お手軽さがウリな「Aquagate Max」とは、そもそもコンセプトが違うということなのだろう。確かにゲームユーザーはハイエンドなCPUやビデオカードを使用するため、水冷ユニットも本格的なものを導入している。先のメンテナンスホールも、限られたPCケースというスペースに無茶な水冷ユニットを取り付けようとするコアユーザーに対する設計だとすれば、オールインワンタイプの水冷ユニットと穴の位置が違うのも納得がいくといえる。
総合的に完成度の高いPCケース
クーラーマスター製ケースの完成度は確実に進化している。高エアフローのコンセプト通り、現状このレイアウトでは最大クラスの高冷却PCケースと言えるだろう。開発者の苦労や工夫も随所に見て取ることが出来た。また、マイナス要因である水冷の物理的干渉部分はマイナーな部類とも取れるし、水冷に関してはこの結果を承知の上、ジャッジはユーザーに委ねれば良い。
総合的には良い所を凝縮させた“今風”のPCケースで、選択肢のひとつとして候補とするには十分であろう。課題も残しつつ今後の更なる進化に期待したい。