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TechCrunch50でネットベンチャーのこれからを見る(3日目)

次の人気Webサービスは倉庫から誕生?

2015年12月31日 17時16分更新

文● ALT Interactive

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午後の審査員

午後の審査員。Sean Parker(ネット上の社会運動組織Causesの会長、ベンチャーキャピタルとしてNapsterなどにも関わってきた)、Don Dodge(マイクロソフトエマージングビジネス部門ディレクター)、Loic Le Meur(ビデオブログサービスのSeesmic CEO)、Jeff Weiner(元ヤフー副社長)。

Session 11:「Virtual Social Networking」
まだまだ余地がある特化型SNSの世界

Birdpostのデモ

北米のバードウォッチングの市場規模は意外にも大きく、社会的意義もある。Birdpostは着眼点が素晴らしかった。

CauseCastのBLOGパーツ例

CauseCastのBLOGパーツ例。社会貢献と募金をWeb上でうまくシステム化。

 Birdpostとは、バードウォッチング愛好家の為のコミュニティ。愛好家はまるでポケモンカードを集めるように、鳥の観察を続ける点に着目。Google Mapと連携して、鳥の情報を登録したり、自分が探したい鳥の情報を検索できる。環境保護の流れにも繋がるこのような視点は他の分野にも適用できそうだ。

 外出前のコーディネイトに悩む女性をターゲットにしたのがCloset Couture。ユーザーが自分の持っている服をまず写真で登録し、それを元にコーディネイトを提案し、それに合うアイテムをリコメンドする。購入後のアップセル・クロスセルもWebでフォローする面白い試みだ。

 故人の思い出を記録する、Footnote。mixiなどでも、亡くなったユーザーの日記データが貴重なバイオグラフィーになることがあるが、Footnoteでは、そこから一歩推し進めて、親族や友人が故人に関連するアイテムを整理し、Google Mapsなどのサービスとマッシュアップしてより価値を高めることができるようにしている。

 Causecastは著名人と社会活動をWebで結びつける。芸能人ブログが人気の日本でも、さらにこのような進化が可能なのではないだろうか。


Session 12:「Research & Recommendations」
マッシュアップとiPhoneアプリで進化する提案型サービス

 GoodGuideは専門家が健康面・環境面といったポイントで製品をスコアリングする。Go Planitは買い物など旅行の要素のパラメータを調整しながら、旅行プランをオンラインカレンダーと地図上で生成する。TrueCarはユーザーが手に入れにくい中古車の実売価格を提示し適正な購入価格を提案する。最後にGoodrecは、ユーザーが記録したリコメンド情報を元に、マップ上にその情報を表示する。


デモピットでの最優秀賞を発表

 ソーシャルニュースサイトのiamnewsは、デモピットで投票による評価が最も高かったため、TechCrunch50の最後にプレゼンをする栄誉を得た。Diggに代表される、ユーザーがニュースサイトを作っていくソーシャルニュースメディアは、日本では未開拓のジャンルだが、まだまだ発展の余地を予感させる。



TechCrunch50はベンチャーのガレージそのものだった

会場は倉庫のよう

倉庫を改装した会場は、ガレージのような雰囲気を醸し出している。

 こうして、3日間・12つのセッションはすべて完了した。52社がWebビジネスのトップランナー(エキスパート)からアドバイスを受け(それは、すなわちポジティブなものであれば投資への「お墨付き」に近い意味を持つ)、デモピットでは多くのビジネスチャンスが提供された。

 審査はエキスパートとのパネルディスカッション形式になっているのも特徴的だ。客席に背を向けるスタイルと異なり、審査員達の発言・見識もクオリティの高さが求められているのだ。

 さて、そのTechCrunch50の会場は倉庫を改装した展示場で、外の空気も直接入ってくるような場所だった。かつてのAppleやMicrosoftのようなスタートアップ企業のガレージをなんとなく想起させる。スタートアップ企業にとってIPOが一つのゴールだとすると、こういったプレゼンテーションの場はスタート地点なのだ。

 渋谷が「ビットバレー」と呼ばれたとき、多くの起業家・事業家・投資家が集結した。しかし、ネットバブルの崩壊でその熱気は冷めてしまった。もし、スタートアップを指向する人々のコミュニケーションが取れるこのような「場」を持ち続けていれば、現在の姿は違っていたかも知れない。

 今回、いくつかの日本の企業家がこの場を目指したのは、すばらしいことでもあり、一方で野球選手がメジャー行きを表明するような寂しさも感じるが、そのチャレンジはいずれ日本のWebビジネスの現状を変えるきっかけになるはずだ。彼らの活躍とそれに続く存在の登場に期待したい。


筆者紹介──ALT Interactive

ALT Interactive

2008年設立。海外のWebサービスのスムースな日本導入をはじめ、インタラクティブ広告制作、マーケティングやインターフェイスについてのコンサルティングに加え、記事・書籍執筆といったオピニオン事業を行っている。

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