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平成20年度富士総合火力演習レポート(前編)

雨の御殿場に鋼鉄の虎を見た!

2008年09月08日 20時00分更新

文● 片田 本朔 / 写真と解説● 藤吉 隆雄・吉田/Webアキバ編集部

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中距離火力はヒット・アンド・ウェイの華となれ

 81mm迫撃砲L16、120mm迫撃砲RTの登場だ。車両から降りた隊員たちは素早く設置、20秒程度で迫撃砲の射撃準備が整う。
 迫撃砲は砲口から弾を入れる前装式、曲射弾道で目標を上から攻撃する火砲だ。建物の裏に隠れた敵もこの攻撃からは逃れられない。81mm迫撃砲は40キロを切る重さなので歩兵が携行することも可能だ。それ故、イラクではテロリストが乗用車に積んで、場所を転々としてながら投票所などの施設を攻撃した、という実例もある。取り回しが簡単でどこからでも撃てる分、敵に回すと厄介な兵器である。

81mm迫撃砲

・対戦車誘導弾
89式装甲戦闘車に積まれた79式対舟艇対戦車誘導弾、87式対戦車誘導弾と続けて発射。火砲と異なり、弾頭を肉眼で追うことができた。続けて96式多目的誘導弾を撃つはずだったのだが、「射撃状況が整わないため、射撃を行ないません」とアナウンスされてしまった。残念。

96式対戦車誘導弾

こちらは96式対戦車誘導弾。この日は悪天候により射撃を行なわず

守りも堅い近距離火力 

 まず登場したのは対人障害だ。これは対人地雷禁止条約の締約以降は「指向性散弾」と呼ばれている。なので「地雷ではない」ということだ。

本体に前方と書いてあるのは、散弾が発射される方向を明確にするためだ。米軍のM18A1も「前方 敵に向かっておっ立てろ」と親切な記載がある。なお、この画像は昨年の総火演で撮影した資料画像だ

敵地を襲う一陣の風!普通科火力

 ここでヘリの登場である。CH-47Jから降下した隊員は橋梁に爆薬をセット。爆破後、再びCH-47Jで帰投というシナリオだ。

CH-47Jチヌークよりファストロープ降下。完全武装の隊員が命綱なしで次々と降りてくる

CH-47Jチヌークよりファストロープ降下。完全武装の隊員が命綱なしで次々と降りてくる

 正直なところ、降下シーンは良く見るのだが回収のシーンが記憶になかった。さてどうだったか、もちろん一人一人が悠長に登るはずもないのだが……。 答えは思ったよりもあっさりしていた。帰りは一本のロープに全員が吊り下ってゆくのだ。
「おお、千手観音に見える」 思わずストレート感想を述べてしまったが、よく見ると隊員たちはぶら下がった状態で射撃姿勢をとっている。もちろん慈愛の代わりに敵に痛打を与える炎の千手観音なのだ(妄想)。

エキストラクションロープにつるされて周辺を警戒しながら脱出

・対人狙撃銃

狙撃手

取材エリア前を移動する狙撃手。手に持つのは総火演では初展示になる対人狙撃銃

 今回、火砲の次に驚かされたのが狙撃手だ。たまたまファインダーを覗いている時に目の前を駆け抜けていったため、思わず声を上げてしまった。緑色のムックというべきか。

対人狙撃銃(M24 SWS)

狙撃なのに後方に立っている隊員さんがいるのは、ちょっと間抜けにも見える光景だが、おかげでどこで狙撃してるか観客にわかる。所持している火器は対人狙撃銃(M24 SWS)。小銃+照準眼鏡に代わって導入されたレミントン社製ボルトアクションライフルだ。この銃を持てるのは射撃レベルの高い選抜された隊員だけなので、こんな機会でもなければお目にかかれない。非常に高価である点や連射に向いていない点など否定的な声もあるが、筆者としては「一撃必殺」のボルトアクションに漢のロマンを感じる

 普段は隠れて撃つところ、見学者に分かるよう見える位置からの射撃となった。近くに立つ隊員は肉眼でも見えたが、肝心の狙撃手は射撃姿勢が伏せ撃ちで、偽装のため輪郭がぼやけてよく見えない。赤帽の隊員がいなかったら、わからなかった。

 射撃目標は500m先の人型ターゲットに埋め込まれた「皿」。 もちろん命中である。

 続いて軽装甲機動車が登場。01式対戦車誘導弾の射撃が行なわれた。 初めは近距離を低伸弾道モードで射撃。続いてダイブモードでの遠距離射撃が行なわれた。低伸弾道モードが目標を正面から攻撃をするのに対し、ダイブモードは目標手前で上昇し、戦車の装甲の薄い上部から攻撃するものだ。

軽装甲機動車の上部ハッチをあけて01式軽対戦車誘導弾を発射。噴射にかくれて本体が良く見えない。 別の車体を別角度から撮った写真では、ロケット弾が噴射する直前に飛翔しているのが良く見えた。

 96式装輪装甲車が登場すると12.7mm重機関銃の一斉掃射が行なわれた。不幸中の幸いか、曇天のおかげで曳光弾の描く弾道がくっきりと見えた。

96式装輪装甲車から12.7mm重機関銃を射撃

その後に後部ドアから小銃小隊が下車戦闘へ

 射撃が終わると後部ハッチから普通科隊員が登場、89式小銃の射撃となった。人型ターゲットは5.56mm弾を浴びて蜂の巣となり、炎上した。非常に分かりやすい演出だ。

 84mm無反動砲、110mm個人携帯対戦車弾が観客席正面で披露された。実際の射撃は離れた場所の茂みで行なわれたが、発射時の後方爆風が数mに渡って白煙を噴いたため、射撃位置はすぐに特定できた。この武器を構えた兵士がいたら前はもちろん、間違っても後ろに立ってはいけない。

赤の腕章の隊員が持つのが110mm個人携帯対戦車弾、青の腕章の隊員が持つのが84mm無反動砲。実際にこの場所から発射するわけではないが、観客から良く見えるように2ヵ所で構えてみせてくれる。構えが微妙に違うのに注目

 普通科火力の締めに89式戦闘装甲車の35mm機関砲の射撃が終わると、ローター音が場内に響き始めた。

(次ページへ続く)

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