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消費者と一緒にモノを作り続ける「空想生活」

欲しいものは提案するのが今時の買物

2008年09月08日 11時56分更新

文● チバヒデトシ 写真● 萩原 淳(パシャ)

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月刊アスキー 2008年9月号掲載記事

立てかけられる卓上IHクッキングヒーター

空想生活から生まれた卓上IHクッキングヒーター「COMPACT IH」。価格は2万3100円。使わないときは縦にすることで、キッチンの狭いスペースなどにも収納できる。

 ここ数年、一般の消費者のアイデアやリソースを活用し、低いコストで製品やサービスを開発するビジネスが次々と生まれている。いわゆる“クラウドソーシング”といわれる手法で、メーカーの商品企画担当ではなくクラウド(群衆)が製品を開発する。

財布

増え続けるカード類を1枚ずつではなく、まとめて1つのポケットに入れられる財布。

半透明の付箋

無印良品とのコラボレーションで開発された半透明の付箋。剥がさなくても下の文字が読める優れモノ。

 エレファントデザインの「空想生活」は、'99年に「空想家電」としてスタートして以来、消費者が提案した新商品のアイデアを、ネットコミュニティ上での意見交換を通じて製品化する“ユーザーイノベーション”という手法を用いてきた。いわば、クラウドソーシングのパイオニアだ。

 まず、消費者が「こんなモノが欲しい」という声をウェブサイトに投稿し、それに対してデザイナーがデザインを提案。消費者はコメントの書き込みや投票を通じて、商品化に賛同する仲間を集める。そして、メーカーから見積もりを取り、販売に必要な予約が集まれば、商品化が決定する。商品化されたアイデアはまだそれほど多くないが、中にはグッドデザイン賞を獲得したものもある。

 エレファントデザインはサイトの運営のほか、メーカーとの交渉など商品化の支援を行い、商品化の際にメーカーから売り上げの一部を成功報酬として受け取っている。同社の谷岡 拡氏によると、そのスタンスは「裏方に徹すること」なのだとか。「ウェブサイト上のやり取りは参加者にお任せしていますが、一度も面識のない方々が商品化に向けて円滑に動けるように心がけています」。

 ニーズに確実に応え、製造リスクを低減できるユーザーイノベーションは、メーカーにとっても福音だ。実際、東京電力や無印良品といった企業が空想生活の仕組みを活用し、商品の開発と販売を行っている。また、日産自動車とのコラボレーションで次世代の車のあり方を考える「空想くるま」や中小企業庁と進める「CUUSOO JAPAN BRAND」、工学・芸術系の学生を対象としたワークショップ「空想スクール」などのプロジェクトも目白押しだ。

 文房具から車まで、さまざまな商品が消費者の声から生み出される。消費者にとって、このダイナミズムは得難い。いまどきの買い物は、既存の商品を選ぶのではなく、欲しいものの提案から始まるのかもしれない。

エレファントデザイン 谷岡氏

エレファントデザイン コミュニティメディア ディヴィジョン 谷岡 拡氏

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