塩澤一洋の“Creating Reed, Creative Mass.──大公開時代の羅針盤” 第18回
塩澤一洋の“Creating Reed, Creative Mass.──大公開時代の羅針盤”
著作権法をポジティブに
2008年09月21日 15時00分更新
そう考えると法律家の役割が明らかになってくる。禁止される行為が類型的に並べられている法律をよく知ることによって、禁止されていない行為、つまり自由に行える行為の範囲を確定すること。それを法律家以外の人に明快に説明すること。市民の自由を最大化すること。
言い方を変えると、法律家の仕事は、「やってはいけない」行為が列挙されている法律を、「これはできる」や「こうすればできる」に翻訳することだ。「できない」を「できる」に的確に翻訳できるのが真の法律家なのである。ネガティブな規定をポジティブな表現に変換するのだ。
従って著作権法については、「著作権法で禁じられているからコピーできない」というのは翻訳前の言い方。確かに著作権法21条(条文)には「著作者は、その著作物を複製する権利を専有する」と規定されているから、そのまま読めば著作者以外はコピーできない。
そこで、これを63条(条文)と併せて読んでみよう。63条1項「著作権者は、他人に対し、その著作物の利用を許諾することができる」、2項「前項の許諾を得た者は、その許諾に係る利用方法及び条件の範囲内において、その許諾に係る著作物を利用することができる」──。
すると、「コピーできない」は「著作権者の許諾を得ればコピーできる」と翻訳できる。すなわち著作権法は、著作物の利用を禁じるものではなく、著作権者から了解を得ればその著作物を利用できる、ということを明らかにしていると読める。禁止的に規定せざるを得ない法律も、こうしてポジティブに変換して理解できるのだ。
著作権法は、多くの人々が著作物を創造し、それを利用することによって、文化が発展することを願っているのだから、そのようにポジティブに捉えることは著作権法の理解としても正しい。
(次ページに続く)
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