怒るほどハマる同期セッション
このミキサー、音も含めて実に具合がいい。Y字ケーブルでも1本500円はするから、これで1000円は超リーズナブルと言える。よし、準備万端整ったぞ。
「えっと、どっちがマスターになります?」
「あ、ボクはスレーブでいいです」
「じゃこっちのMACアドレスが表示されるから、それ選んで」
そういう日本人っぽい譲り合いの精神を発揮しつつ、マスターになると何故か偉くなった気になるわけだが、実際にはシーケンスの開始と終了を行なう権限しかない。
で、いざポチッとスタートしてみると、わははは、これは面白い。これでは面白すぎて終わるきっかけがつかめないぞと思い、いきなりマスター権限を発動してシーケンスを止めたら、
「なんで止めるんですかっ!」
と船田さんがムッとしたくらい面白かった。
対抗心がセッションに火をつける
DS-10は同期させるとソングモードが使えない。つまりあらかじめ設定したパターンの進行は再現できない。でも手動のパターン切り替え、シンセのパラメータ操作、シーケンスの書き換えは鳴らしながらでできる。それで相手の出かたを見ながら、応戦するわけだが結果的に次から次へと新しい音、新しいループが折り重なっていくことになるわけだ。
例えば向こうがフィルターを徐々に開け、「ほふぷぶびぎぎぎぃ」なんてやっているところにカオスパッドで「ぐぴょーどどどばぱぱ」みたいなループを作って対抗する。と、なぜか敵はiPod touchを取り出し、オーディオループシーケンサー「BeatMaker」(関連記事)をチンチン鳴らし始めるので、私も隠し持っていたもう1台のDS Liteで「これで音圧2倍だざまあみろ」攻撃をするわけなのだ。
ちなみに、すでに同期演奏が始まっているDS-10のネットワークに後から割り込むことはできない。よってテンポは手動で合わせるしかないが、BPMとステップ数が同じなら合わせるのは割と簡単だ。
で、アイディアが尽きたところでセッション終了。
問題はイヤホンを付けてジャムっている間、言葉でのコミュニケーションが取れないことだった。お互い目の前にいるのだが、イヤホンをしているから普通に喋っても聞こえないのだ。だからと言って、
「ねえ、そこ半音上げてくださいよ!」
「次のパターンはペンタトニックですから!」
のような大声を上げてしまっては、ミキサーを用意した意味がない。
次はインカムが必要だと思った。至近距離の会話にマイクを使うのも不気味だが、おそらくコーヒー店以外の場所でもこれは必要になる。マイクの値段や実装方法を、船田さんがその場で考え始めたのは言うまでもない。
もうひとつ問題があるとすれば、大の大人がイヤホンをして向かい合い、小さな画面をチクり合っている姿。これは傍目に果たしてどうなんだということだ……。
この連載の記事
-
第8回
AV
DS-10を歌わせる、ヨナオケイシの超絶テク -
第7回
AV
開発者が語る「KORG DS-10」の秘技 -
第6回
AV
DS-10公式イベントに出演──イパネマの娘を生で -
第5回
AV
KORG DS-10──生みの親・佐野信義氏に挑戦 -
第4回
AV
音でつながる掲示板「ピコカキコ」に挑戦だっ!? -
第3回
AV
冥土の土産に世界デビュー、動画投稿サイトはステージなのだ -
第1回
AV
どっこい生きてる、アナログシンセ 「KORG DS-10」 -
AV
つなげ!オンガク配電盤〈目次〉 - この連載の一覧へ