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松村太郎の「ケータイが語る、ミクロな魅力」 第35回

「骨が折れる」iPhoneの日本語変換

2008年08月22日 13時30分更新

文● 松村太郎/慶應義塾大学SFC研究所 上席所員

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言葉をモバイルする未来


 既存のケータイの日本語力まで追い付いてほしい──。これはひとつのiPhoneに対する期待ではあるが、一方でiPhone独自の価値を持たせることはできないかとも思ってしまう。

 ATOKでは、「きょう」と入力すると「2008/08/20」が候補に出てくる(原稿執筆時)。Macの内蔵時計と照らし合わせて、今日の日付を変換候補に出してくれるのだ。そんな風に、ユーザーが置かれている状況を察知して変換候補を出したり、入力支援を行なってくれると非常に便利になるだろう。

 考えてみれば、iPhoneはセンサーの塊である。そして、電話帳や着信履歴、スケジュールといったデータベースを、アプリから活用することも可能だ。

 例えば、GPSの即位情報を生かせば、「いまここにいるよ」と入力した際、「ここ」の変換候補として地名や地図のリンクを表示することができる。あるいは同音異字の駅名があるケースでは、現在地の近くにある名前を候補に出すといったダイナミックな辞書のチューニングもできそうだ。

 位置情報で辞書ごと変えてしまうことも考えられる。ケータイ向けにも方言辞書はリリースされてるが、今いる場所の方言や言語が自動的に入力できるようになったら、コミュニケーションも変わる。文字のやりとりも「郷に入っては郷に従え」ということだろうか。

 iPhoneユーザーが置かれた状況が文字入力に反映できるようになったら、デスクトップの日本語入力環境とはまったく違う価値を生み出せる。

 渋谷のスクランブル交差点にいるからこそ入力できる文章。あるいは沖縄、宮古島にいるからこそ活用できる言葉。松尾芭蕉と同じ言葉を使ってみるなど、場所と言葉の密接な関係を楽しみながらテキストでコミュニケーションできる端末が出てきたら、ワクワクしてこないだろうか

 ただ、そうした魅力的な機能を追加したとしても、スピーディーに文字を変換できなくては、元も子もない。ケータイメールでのコミュニケーションを好む人が多い日本人に受け入れられるためにも、ぜひiPhoneの日本語環境を改善してほしいと願ってやまないのだ。


筆者紹介──松村太郎


ジャーナル・コラムニスト、クリエイティブ・プランナー、DJ。慶應義塾大学SFC研究所上席所員(訪問)。ライフスタイルとパーソナルメディア(ウェブ/モバイル)の関係性について探求している。近著に「できるポケット+ iPhoto & iMovieで写真と動画を見る・遊ぶ・共有する本 iLife'08対応」(インプレスジャパン刊)。自身のブログはTAROSITE.NET



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