狭い水路を抜けてクルーズは長浦港へ
横須賀本港を後にして、今度は長浦港に向かう。途中通過する細い水路は荒井堀割水路で、明治22年に旧海軍によって開削された人工の水路だ。この水路のおかげで、横須賀港内の艦船は本港と長浦港を行き来できる。向かって右手は吾妻島と呼ばれる。対岸は箱崎ターミナルと呼ばれ、燃料補給施設となっている。
吾妻島は一見何の変哲もない島だが、実は内部がくり抜かれており、膨大な燃料と弾薬を貯蔵している。この貯蔵施設の原型は旧海軍によって建設されたもので、現在の貯蔵燃料は約40万キロリットルあり、これは第7艦隊が通常消費する燃料の1年分に相当する。
横須賀本港とは異なり、長浦港は一般船舶も入ることができる。まず見えてきたのは、並んで係留されている護衛艦「はつゆき」(DD-122、第11護衛隊所属)、「さわゆき」(DD-124、第11護衛隊所属)、ミサイル護衛艦「はたかぜ」(DDG-171、第4護衛隊所属)だ。
その少し先にあるクリーム色の建物が、海上自衛隊の機動戦力である自衛艦隊の司令部だ。旧海軍でいえば連合艦隊司令部にあたり、ポールには三つの桜を染めた自衛艦隊司令官を示す将旗がひるがえっている。
その正面に係留されているのが、護衛艦隊旗艦であるミサイル護衛艦「さわかぜ」(DDG-170)だ。護衛艦隊旗艦はどこの護衛隊にも属さず、普段は自衛艦隊司令部の前に係留されている。半ば象徴的な存在なので、艦齢の長い旧式艦が旗艦となることが多いそうだ。この日は、護衛艦「しらゆき」(DD-123、第11護衛隊所属)も一緒に係留されていた。
更に進むと、やや小型の艦艇が横付けされた異様な姿の艦が見えてきた。何やら目盛りのようなものがびっしり書き記してある。これは退役したミサイル護衛艦「たちかぜ」(DDG-168)で、護衛艦隊旗艦「さわかぜ」の同型艦だ。既に装備は取り外され、後はミサイル等の試験の的となる実艦標的として最後のご奉公を待っているのだという。隣にいるのは試験艦「くりはま」(ASE-6101)だ。
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