賛否両論のTD-SCDMA
ついでに言えば、TD-SCDMAは中国が独自で開発したものと言われているが、すでに携帯電話関連の特許ががんじがらめとなっている状況なので、本当のところは中国の特許は少ない。
同規格を中心になって開発した大唐電信は、TD-SCDMAの特許全体の7.3%しか占めておらず、残りはノキア32% エリクソン23% シーメンス11%となっている。スタンフォード大学教授の盧偉氏はTD-SCDMAについて「IEEEには、WCDMAの論文は7万1675、CDMA2000は5万7278、TD-SCDMAはわずか数百しかない」とレポートで書いている。
最近掲載された中国メディアのTD-SCDMAに関する記事を見てみよう。TD-SCDMAをプッシュする記事と、「冷静に見て前途多難だよね」と分析する記事に二分されている。4ヵ月ちょっとで、大都市を中心に販売して1万台売れたことを「売れる」と判断するか「売れてない」と判断するかだが、前途多難と見る後者の理由を紹介してみよう。
- 電波が不安定
- 速度が予想外に遅い
- 通話料が高い
- 端末はほとんどが中国メーカーで、外国メーカーの参入はLG、サムスンだけ
──という理由を挙げている。
愛国心の強い中国のインターネット世代
ところで中国でインターネットを利用する主要な層は20代以下の若者だ。彼らは一般的に言って愛国心が強く、性能はさておき、中国独自規格であれば、中国の規格という理由だけで支持しがちだ。
代表的なものでは、DVDの後釜で中国においては製品発表当初、Blu-rayやHD DVDの対抗馬とされた「EVD」がある(関連記事)。インターネット上のアンケートでは「中国発規格を支持するから買う」という意見が多数派であった。結果としてまったく売れなかったが……。
TD-SCDMAはEVDの前例よりもさらにひどい。
中国のインターネット利用者にすらも「実際に売れない」だけでなく、「期待できない」ものであるらしい。CNET中国がサイト利用者を対象に、「中国の3Gケータイはどの規格に期待する?」という質問を行なっている(8月6日の原稿執筆時点)。
意外にもTD-SCDMAに期待する声は少ない。実はこのアンケートが出た当初、TD-SCDMAは50%以上の票を集めた。TD-SCDMAは最も期待されている3G規格という予想通りの結果となったが、時間が経つにつれ徐々に人気が低下し、CDMA2000が7割以上の人気を集め一番人気となっている。いまや「中国発の規格」は売り文句にすらならないのだろうか。
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