湿気が敵! 過酷な状況下でのコンピュータ利用
首都圏外郭放水路全体が完成したのは2006年だが、一部完成した施設は2002年から稼動していたという。そのため、機器やコンピュータは、すでに6、7年動いているものがある。設備の老朽化にも対応していく必要が出てきていると語る。
「点検時に問題がなくても、実際に使用する際に壊れていることも考えられます。そこで、常に設備の老朽化を考慮して、点検していくことが重要です。湿気に弱いコンピュータが組み込まれた機器もたくさんあります。基盤の老朽化は、点検で発見することが難しいので、予備基盤などを用意して、対応できるようにしています」
地下に巨大な放水施設を作るのは、前例のない試みだった。建設時には、予測できなかったことも起きただろう。
「トンネルはセグメントと呼ばれるコンクリートの枠をつなげて作っています。そのセグメントの端が割れてしまうという現象が起きました。そこで、専門家に原因を検討してもらいました。トンネル内に水が入っていないときは土圧のみがトンネルの壁にかかります。水が入ると、それに加えて内側から水圧がかかるため、“水圧がかかったり、かからなかったりする”現象の中で、継ぎ手部分にねじれた力が加わってしまっていたようです」
公共事業、入札のポイント
首都圏外郭放水路の建設は、総工費2400億円のビックプロジェクトだ。建設に関わった業者も多く、現在も多くの業者が運営と維持にかかっている。植松さんは、それを取りまとめる立場にあるという。
「国土交通省の職員だけでは、設備を稼動させたり、工事や点検をしたりすることはできませんので、外部の企業に依頼して“やってもらう立場”です。そのため、多くの業者をマネージメントすることが私たちの仕事になります。多くの業者が同時に仕事をする際には、業者ごとの担当分量などの調節を上手にやらないと、業者間の関係がうまくいかないこともありますので、気をつけなければなりません。例えば、狭い範囲内に数社が工事に入る場合では、各業者が作業しやすいスペースに重機を設置したがります。その意見をすべて呑むことはできませんので、後の作業の効率などトータル的に考えて、判断、指示する必要がありますね」
では、どのように発注業者を決めているのだろうか。
「現在は業者の独創性を評価しています。同じ目的物を作るにしても、業者によって提案してくる工法が異なります。その中から、一番評価できるものを選び、契約しています。設置するコンピュータ機器についての、評価項目には、コストやスピード、安全性とさまざまなものがありますが、地下の深い場所での工事が多く、現場条件がよくないので、特に耐久性や品質が高いものを作れる業者を評価していますね」
- ■取材協力
首都圏外郭放水路
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