総メディア化時代の正しい振る舞いとは
荻上 ただ、発信者としてなら、その空間から「降りる」ことはたやすいし、SNSなどの限定された空間に移動することもできます。
しかし自分が発信しなくても、他人が勝手に自分を発信してしまうかもしれない。おそらく秋葉原を撮影した膨大な写真の中には、どこかに僕も写り込んでいるはずです。もちろんそれをコントロールすることはできない。誰もがメディアになる時代ということは、そのことを知ったうえで振る舞いを決定することが求められます。
また、誰もがメディアになる時代には、メディアの取捨選択が求められます。そこで質の悪いメディアが「正しく淘汰」されるのであれば別にいいのですが、「読むべき空気のスタイル」ばかりが強調されるだけ、という事態になることは大いにありえます。もちろんそこで、できる限り“別の空気”を持っている人に配慮してコミュニケーションする、ということは大変重要です。
藤代 総メディア社会の中では、どういう枠組みでメディアとつきあうのか、ある程度決めて、かつ友人や家族にも周知しないといけない。これまでと違う新しいメディアリテラシーが求められているんです。交通事故のシミュレーションみたいに、メディアでハイになってスピード出しすぎたら大変なことになりますよ、という教育も必要になるでしょうね。
コメンテーターのプロフィール
藤代裕之: 1973年生まれ。徳島新聞記者などを経て、大手町ビジネスイノベーションインスティテュート(OBII)共同代表、マイネット・ジャパンアドバイザーなど。メディアに関する議論から身辺雑記まで、幅広い内容のブログ「ガ島通信」が好評。
荻上チキ: 1981年生まれ。評論や編集などの活動を行う。専門はテクスト論、メディア論など。著書に『ウェブ炎上――ネット群集の暴走と可能性』(ちくま新書)『12歳からのインターネット』(ミシマ社)など。7月に『ネットいじめ』(PHP新書)を上梓した。