このページの本文へ

古田雄介の“顔の見えるインターネット” 第30回

ニコ動の作品は体験版──BUBBLE-Bの正体を探れ!

2008年08月04日 11時00分更新

文● 古田雄介

  • この記事をはてなブックマークに追加
  • 本文印刷

ルーツは、メガデモ×MADテープ×電気グルーヴ


── では、一番最初はどんな目的で、ああいう映像作品を作ったんですか?

BUBBLE-B 完全にライブ用です。映像を作ったのも、2000年に僕がBUBBLE-Bを名乗って活動を始めたのがきっかけなんですよ。当時は環境も整っていなかったし、ネットにアップするという考えはまったくなかったです。

 それまで活動していたカラテクノで、いまいち何をすればいいのか分からなくなっていたんです。当時の僕らは、ハードコアテクノの流れを汲んでいたので、ハイテンションで「ギャー」って騒いで面白がらせるっていうライブをやっていたんです。ナードコア自体がそういうものだと認識されていましたし。だけど、笑いの追求という観点で考えると、もっとシュールに、ムスッとした顔で黙々とやって笑わせるという方向が自分に合ってるなと。

 それで、曲と映像を合わせたものをMPEGで作っておいて、僕はDJブースでプレイヤーの再生を押すだけというライブをやり始めたんです。映像が流れている間、一切客を煽ったりもせず、ただ黙々とああした作品を流すわけですね(笑)。マンガで言ったら、漫☆画太郎先生の作風だったものが、和田ラヂヲ先生のほうにいった感じです。

BUBBLE-B作

BUBBLE-B名義の記念すべき第一号作品「バブルB作」。小林製薬の消臭スプレー「トイレその後に」の15秒CMの映像から3分19秒のコンテンツを作り上げた。素材のセレクトの理由は「いや、特に何も考えず、『これでいけるんじゃね?』って感じで」とのこと


── 分かりやすいですね(笑) ああいう素材をリミックスするアイデアは、どこにルーツがあったんでしょう?

BUBBLE-B 一番強く影響を受けたのは、メガデモ※1です。大学時代にハマって海外から落としまくっていました。メガデモで使われる音楽の多くはテクノで、それに合わせて抽象的でエグい映像がうごめいたりするんですよ。PVほどの作品性はなくて、すごく自由で面白かった。

 それより前には「MADテープ」の体験がありました。僕が小学校5年生の頃から勝手に作っていたんですけど、テレビにラジカセをくっつけて、アニメの曲とかを録音するわけです。それを全然違う構成にして、途中でオナラの音入れたりして(笑) そんなことばかりやっている小学生でしたね。


── へー、子供の頃からつちかっていたわけですか。ちなみに、プロフィールによると、高校の頃に自身のテクノレーベルを立ち上げていますよね。テクノに目覚めたのは、その頃ですか?

BUBBLE-B そうです。「電気グルーヴのオールナイトニッポン※2」ですね。そこで卓球さんが紹介するテクノを聴いて、「卓球さんに良いと言われたものは良い」という感じで、思いっきり影響を受けました(笑) それからしばらくして、京都で一緒にやっていた知り合いとテクノレーベルを立ち上げたんですよ。

※1メガデモ PC黎明期から1990年代まで、主に欧米圏で流行したサブカルチャー。当時普及していたフロッピーディスク(Amiga)に保存できる1MB以下のファイルサイズで、音と映像を合わせたショートフィルムを作っていた。このサイズが一般化したのは、ネット環境が整っていない時代、友人間でFDを媒体にして交換しあった背景がある。
※2電気グルーヴのオールナイトニッポン 1991年6月から1994年3月までニッポン放送で放送された伝説的なラジオ番組。電気グルーヴの石野卓球とピエール瀧がパーソナリティを務めており、番組内で卓球氏が推薦するレコードを紹介するコーナーでは、最新のテクノシーンの楽曲が頻繁に流されていた。

カテゴリートップへ

この連載の記事

注目ニュース

ASCII倶楽部

プレミアムPC試用レポート

ピックアップ

ASCII.jp RSS2.0 配信中

ASCII.jpメール デジタルMac/iPodマガジン