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松村太郎の「デジタルとアナログの間」 第1回

松村太郎の「デジタルとアナログの間」

Micro Presence

2008年08月19日 18時00分更新

文● 松村太郎

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職人技が実現する立体的な画像


デスク

Apple Cinema HD Display 23インチを2台並べ、RAIDを組んでデータのバックアップも万全という作業環境を用意する

 極小なすべてのパーツにピントが合っている「Micro Presence」は、2次元の写真を合成していながら、不思議と立体画像のようにも見える。この手法なら、小さすぎるためにモデリングやモーションキャプチャーといった作業が困難な昆虫の立体データをデジタルカメラで作成できる。しかも写真データを使うため、線で描画されるような3Dモデリングデータとは違い、そのテクスチャーは限りなく本物に近い。

モニター1

デジタル画像の合成には、職人技が光る。Photoshopでの作業は、単なるピントがあった個所を組み合わせるだけでなく、若干の拡大、縮小も行う必要がある

 細かい触覚の先や固そうな羽に生える毛まで高精細な画像は、モニター上ですら大迫力だ。1cmに満たない昆虫を20cm四方まで拡大すれば、それはまさに「見たことのない世界」を目の当たりにする瞬間であり、初めて見る昆虫の強さに恐怖すら覚える。

──小さな昆虫を一般的なデジタルカメラによる撮影しても、すべてにピントが合った写真にはならない。「Micro Presence」の作成は、少しずつピントをずらして撮影した写真から、ピントが合っているパーツを取り出して合成する。50枚程度の写真からひとつの昆虫の写真ができる。被写体がとても小さいので、カメラの位置を変えていなくてもピントをずらしただけで、像の大きさが変わってしまう。合成作業の際、その調整が難しい(小檜山氏)。

 つまり、デジタル写真の合成とはいえ、この技術には小檜山氏の熟練の技が必要。デジタルデータが、人間の感覚を基準にした操作というアナログな技術によって成り立っているのだ。

モニター2
モニター3

データを拡大すると、球状の先端を持つ毛が見えてくる。ここまでの解像度は圧巻だ


(次ページに続く)

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