戦いから2週間――冷めぬ熱。「世界」は人を変える
かつてないほどの悔しさを味わい、世界大会という非日常の熱狂にあてられた日々からおよそ2週間が過ぎた。とかく斜に構えがちな大人は思う。「日本の日常に戻ってしまうと、日々の生活に埋没し、あのまぶしいほど輝きを放っていた若い精神がくすんでしまうのではないか」と。彼らに心境の変化を聞いてみた。
「“熱”が持続しているかというと、まだ毎日のようにImagine Cupを思い出してメンバーと話をします」と切り出したのはNISlabの加藤さん。「デモの失敗、実装面でできたこと、プレゼンの見せ方、時間いっぱい最大限に仕上げたものが、後から見るとまだまだ伸ばせる要素があり、世界大会で負けて終わったので目覚めが悪い」という。
また、NISlabリーダーの松下さんは「自分たちの周りの出来事から、しっかりとしたストーリーをつむぎだし、実装に活かしていた各国の人達をすごいと思いました。自分が今までしてきた精一杯の努力が全然足りないと思えるほどです」と話す。
とはいえ悔やむばかりの日常を過ごしているわけではない。「学部時代には何を勉強すればよいかわからないと漠然と感じることもありました。Imagine Cupを経て、基本的なところでは英語やスライド作成、プレゼンの実演、技術的なところではC#やWPF(Windows Presentation Foundation:マイクロソフトのXMLベースのユーザーインターフェイスモデル)、zigbee(短距離無線通信技術)など、勉強すべきことが具体的にわかるようになりました」(加藤さん)、「友人の帰国子女の子にお願いして、英語を教えてもらうことにしました。発音の練習から始めています」(松下さん)など、新しいことを積極的に実行していくように日常が変わったようだ。
すでに来年のImagine Cup 2009を目指してチームとしてのミーティングを始めており、卒業する松下さんの代わりのメンバーやテーマ選びを始めている。ちなみに来年のテーマは平和と安全、開発と貧困、環境、人権とグッドガバナンスなど、アフリカ特有のニーズと課題を国連がまとめた「ミレニアム開発目標(Millennium Development Goals: MDGs)」だ。加藤さんは「テーマの制約が緩くなると聞いていたのに、MDGsは国連が指標をしっかり定めている問題ばかりで、実はかなり難しいんじゃないか」という。また、問題の幅が広いため「独創性をうまく出すことが重要」であり、「とにかく悔しさが抜けきらず、テスト勉強をしながら2009年の課題を考えている感じ。まだまだ燃えています」と話す。
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