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シグマ VS キヤノン 標準レンズ4本勝負

2008年08月04日 14時50分更新

文● 斉藤博貴

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比較を終えて


 おそらく、他社も同じ基準で開発すれば、同様の製品を設計できるだろう。しかし、これを実際に、しかも一番最初に発売してしまったシグマの情熱には脱帽だ。おそらく、「売れる企画」よりも「やりたい企画」を優先して誕生したのが、50mm F1.4 EX DG HSMではないだろうか。

 このあたりの事情は、先に発売された超大口径望遠ズームレンズ「DG APO 200-500mm F2.8EX」(通称「マグロ」、実売262万5000円) にも通じるものがある(関連記事)。

 さすがシグマ。正直「勇気あるな」と思う。

 50mm F1.4 EX DG HSMは、重い、大きいの二重苦。つまりフィルム黄金期にどこかのカメラメーカーが定義した「一眼レフカメラの三悪」の中の二悪を体現するレンズである──うるさくはないので三悪ではない。しかし、その描写性能は抜群である。

 おそらく他社のレンズの設計が古すぎるからだろう。フルサイズ機のユーザーにしてみれば、同レンズが最良の選択ではないかと思われる。実売価格も5万5000円前後に抑えられていて、コストパフォーマンスは非常に高い。


作例比較


 以上3項目をテストしてきた。これらは、実験内容に特化した被写体ばかりを選んで撮ったものだ。しかし、それではレンズの真実は分からない。そこで最後に、実験ではなく作品として撮影した場合の比較を用意した。平たく言えば、実験終了後に筆者が撮りたいモノを遊びで撮った被写体である。「周辺光量」「点光源の描写」「描写性能」を全体のバランスの中で検討できるはずだ。

 撮影レンズは、シグマの50mm F1.4 EX DG HSM、キヤノンのEF50mm F1.2 USM L、EF50mm F1.4 USMの3本だ。比較用作例は開放からF4.0の絞り域で撮影。撮影感度はISO 400に統一してある。

 どのレンズもF4.0まで絞ると、描写性能はほぼ横並びになる。つまり、開放絞り~F4.0間の描写にこそ、それぞれの製品の個性が凝縮されている。

50mm F1.4 EX DG HSM


 今回比較した4本の中では、50mm F1.4 EX DG HSMで撮影したものがもっともシャープだ。特に気に入ったのは2点。F1.4でもハッキリとした描写で撮れること。そして、F2.0以上絞っておけば、(サジタルコマフレアによる)点光源の描写がほとんど乱れないことだ。

シグマF1.4

開放F1.4

シグマF2.0

F2.0

シグマF2.8

F2.8

シグマF4.0

F4.0

 周辺光量落ちも同レンズがもっともなだらかだ。それも2EV絞ったF2.8でほぼ解消される。フルサイズ機で夜景を撮るなら、現状ではベストなレンズではないだろうか?

EF50mm F1.2 USM L

 絞り開放のF1.2では一枚フィルターが入っているかのようにぼんやりしている。F1.4まで絞れば、全体的な描写性は向上する。点光源の描写の乱れはF2.0まで絞ると影をひそめる。周辺光量落ちはF4.0まで絞ると解消されるが、F1.2~1.4ではドーム状に降りてきている。まるで、船舶を覆い包むかのようだ。

キヤノンF1.2

開放F1.2

キヤノンF1.4

F1.4

キヤノンF2.0

F2.0

キヤノンF2.8

F2.8

キヤノンF4.0

F4.0

 このレンズは「味を活かして撮るレンズ」である。その意味で「50mm F1.4 EX DG HSM」以上に高度なテクニックが必要な、奥の深いレンズでもある。真価を発揮するのは、露出不足になる夕暮れ時、浅い被写界深度を活かすポーレートなどだろう。個性的なレンズだけに、得意不得意がハッキリと出やすい。

 例えば今回行なった比較テストのうち、2項目はかなり不利な条件だったはずだ。なお、今回のレンズ中唯一、防塵防滴対応である点も忘れずに書いておく。

キヤノンEF50mm F1.4 USM

 絞り開放のF1.4では霧が掛かっているかのようにソフト調だが、F2.0まで絞ると改善される。F2.8から劇的にシャープになる。サジタルコマフレアによる点光源の描写の乱れはF4.0まで絞ると影をひそめる。

キヤノンF1.4

F1.4

キヤノンF2.0

F2.0

キヤノンF2.8

F2.8

キヤノンF4.0

F4.0

 周辺光量落ちは、EF50mm F1.2 USM Lに似た傾向だ。F4.0まで絞ると解消される。F1.2~1.4では船舶を覆い包むかのように、ドーム状に光量が落ちてきている。

 EOSシリーズをフィルム時代から見守ってきたレンズだ。だから、伝統的な作法で撮ると単焦点レンズらしく、シャープな描写になる。

 絞り開放はどちらかというと緊急避難的なもので、むしろ大口径を活かして2EVくらい絞って撮るのがエチケットだ。きっちりと約束事さえ守れば裏切らない素直なレンズである。

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