日々原稿を書く筆者のような仕事は極端だとしても、ビジネス文書の作成などでキーボードの使用頻度が高いPC利用環境では、なるべくキーボードからマウスに持ち変える手間(手の移動距離)をできるだけ減らしたいのが素直な気持ちだろう。ノートPCを選ぶときに、キーボードのタッチだけでなくポインティングデバイス(タッチパッド)の位置や大きさ、操作感などを入念にチェックする人も珍しくない。デスクトップPCでも、なるべく手の移動を少なくするためにマウスではなく今でもあえてトラックボールを使ったり、タッチパッド/スティック付きのキーボードをわざわざ購入したりと、工夫している人も多いが、キーボードのタッチ感とポインティングデバイス搭載の両立はなかなか難しいのが現実だ。
ぶっといバーでマウスポインターを操作
サンワダイレクトがウェブ限定で販売している「TRACKBAR emotion」(トラックバー エモーション)は、キーボードの手前に設置するパームレスト型のポインティングデバイスだ。横長のボディーには4つの左右ボタン(うち2つは機能ボタンとして使用)とスクロールダイヤル、さらに円筒形の大型バーが並ぶ。マウスポインターの移動はこの大型バーで操作するのだが、円筒を前後にクルクル回転させるとポインターが上下に移動し、左右方向の移動はバーそのものを横にスライドさせる仕組みだ(タッチセンサーではない)。インターフェースはUSBで、デバイスドライバーは製品自体に添付しておらず、対応OS(Windows/Mac OS X、詳細はスペック表参照)であれば一般的なマウス同様にUSB HID(ヒューマンインターフェースデバイス)として利用できる。
本体裏面の小さなボタンを押すと、操作部の機能が上下左右逆転するという変わったファンクションが用意されており、写真からバーの位置を手元側に入れ替えて使うことも可能だ(ノートPCのタッチパッドに近い指運びになる)。この機能は、単にバーの位置を前後に入れ替えるだけではなく、正位置では若干奥に向かって傾いているパームレスト部の傾斜角を、手前に向かって傾くように変更できるため、キーボードの傾斜具合や普段から慣れた腕・手首の高さに合わせて選択できる。
実際に使ってみると、キーボードと組み合わせたときにやや大きい(場所を取る)と感じるものの、そのぶん操作時の安定感はかなり高い。バーを回転/スライドしてマウスポインターを動かす操作感はいかにも奇抜に見えるが、トラックボールと同様に物理的にバーを動かすので、感圧/静電誘導方式のタッチパッドやスティックよりもカーソルの動きを直観的に把握しやすい。バーというデバイスを動かす距離が大きいため、マウスカーソルを細かく動したいときにもスムーズに対応できて使い勝手は良好だ。
また、トラックボールだと十分に指が届く範囲にボールの頂上部が位置していないと思い通りに操作しにくいのだが、本機のようなバーだと操作域が左右にかなり広いため、ホームポジションから指が離れた状態でも問題なく操作できる。これも使ってみると分かる利点だ。本機はパームレスト機能も備えているので、本来はキーボードに手を置いて自然にホームポジションになるように置く(付属マニュアルには“GキーとHキーの間にトラックバーの中央が来るように”との指定がある)ほうが姿勢的にも正しいのは確かだが、ShiftやCtrlキーを押しながらドラッグするなど一部の操作ではどうしても手をホームポジションから左右にずらす必要があるため、操作可能範囲が広いバーというデバイスは、実は理にかなっている。
スクロールホイールの操作は一般的なマウスのホイールそのものなので、ノートPCのタッチパッドのように特定領域を共有することなく、簡単にスムーズなスクロール操作が可能で、ウェブブラウジングも非常に快適だ。
掲載当初、「標準でラバーのカバーが付いてくる」と記述しましたが、正しくは「初回限定でラバーのカバーが付いてくる」となります。お詫びして訂正いたします。(2008年7月31日)
高さの合わない椅子や机で毎日何時間もキーボードやマウスを操作し続けていると、腱鞘炎などのさまざまな障害を招きかねない。そんな知識をお持ちなら、パームレストなどの周辺機器を積極的に試している方もいると思うが、今使っているお気に入りのキーボードと組み合わせられるトラックバーも、選択肢の1つに入れてみてはいかがだろうか。
TRACKBAR emotionの主なスペック | |
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品番 | 400-MA009 |
インターフェース | USB |
対応OS | Windows XP/2000/Me/98 SE/98、Mac OS X 10.2以降 |
本体サイズ | 幅280×奥行き105×高さ32mm |
重さ | 300g |
