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モバイルノートの新時代を開く渾身の意欲作

APR: MacBook Air

2008年07月30日 18時00分更新

文● 今井 隆、柴田文彦、MacPeople編集部

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2. Architecture


薄さを実現するために施された数々の工夫

 極限とも言える薄さを実現するために、MacBook Airにはいくつもの工夫が凝らされている。マシンの「中身」たるロジックボードはその最たる例だ。

 従来のMacBookシリーズとは違って高さのある部品を配置できないため、基板面積の縮小は最大の課題だ。さらにボディーが外縁に向かって薄くなっていく独特のデザインであるため、シャーシの外周部には部品を配置できるスペースがほとんどない。従って外見のイメージ以上にロジックボードを薄く小さくしなければ、そのデザインを実現できないのだ。

 ロジックボード表面

(1) CPU CPUは低電圧動作のモバイル Core 2 Duoプロセッサーを搭載。従来のMacBook/同 Proのプロセッサーとの違いは、Lランクに分類される低電圧動作/低消費電力のバージョンで動作することと、SFFと呼ばれる超小型パッケージを採用している点だ
(2) GMCH(ノースブリッジ) Mobile GM965 ExpressチップセットのSFFパッケージ版である「82GS965」を搭載している。GM965同様にGMA X3100統合グラフィックを内蔵し、メインメモリーの一部をビデオメモリーとして使用するUMA方式を採用
(3) メインメモリー ロジックボードの両面には、DDR2-667仕様のSDRAMメモリーチップを8個ずつ、計1GBを2バンク(2GB)直付けで搭載している。各バンクが独立したメモリーバスに接続されるデュアルチャンネルメモリー構成になっている
(4) ICH(サウスブリッジ) ウルトラモバイル向けのI/Oコントローラーハブである「82801HUB」を採用している。Apple TVに搭載されている「82801GUX」の後継チップに相当するものと考えられる

 実際にロジックボードを見て気づくのが、やはり全体が偏平なパーツによって構成されていることだ。底面パネルを固定するネジは少なくて短い。通常の基板には必ず見られる筒形のアルミ電解コンデンサーが1個も見当たらないのは一驚に値する。その代わり、表面にはタンタル固体コンデンサー、裏面には積層セラミックコンデンサーをびっしりと実装することでその機能を実現している。

 ロジックボード裏面

(1) パワーマネージメントユニット 電源制御コントローラーである「SMC」(System Management Controller)には、従来の「F2116V」に代わって「F2117LP」を搭載している。内蔵ROMが128KBから160KBに増量されており、ICHとLPCインターフェースでつながっている
(2) LVDSドライバー MacBook Airは内蔵する13.3インチ液晶モニターのほかにMicro-DVIポートを搭載しており、外部モニター出力が可能だ。「Sil1392C」はそのMicro-DVIポート出力のためのLVDSトランシーバーチップで、ほかのモデルにも見られる一般的なものだ

 コイルやパルストランスなどのインダクターも薄い部品が使用されている。CPUやチップセットは、従来のSocket PやBGAパッケージではなく、「SFF」(Small Form Factor)の超小型BGAパッケージを採用。SSFは、小型化や薄型化を要求されるモバイルPCに最適な小型チップ群だ。

 MacBook Airが採用しているCPUとチップセット(GMCHとICHの組み合わせ)は、一般的なモバイルプロセッサーとチップセットのパッケージサイズとは異なり、通常のモバイル向けチップ群の面積の45%程度まで小型化された特殊なパッケージである。レノボ・ジャパン(株)の「ThinkPad X300」なども、MacBook Airと同じSFFのCore 2 Duoとチップセットを採用している。

 アップルは1月のMacworld Expoで、SFFのCPUがAirのために作られた特別なチップであるかのように説明していたが、実際はそうではない。すでにアップル製品は「Apple TV」のA110とGU945 Expressチップセットという組み合わせのSFFパッケージを採用している。米インテル社が狙うSFFの市場、UMPCやMIDあるいは携帯電話や携帯情報機器のためのUMIAプラットフォーム向けのパッケージなのである。

 冷却システムにも薄型化のための工夫が施されている。ロジックボードは冷却ファンを避けるようにカットされており、そこに空気を強く押し出すシロッコ型のファンを格納している。ファン部分の放熱フィンと熱源であるCPUとチップセット間は熱伝導能力に優れたヒートパイプで結合されているのが特徴だ。

 実際、発熱は低く抑えられている。1世代前のMacBook/同Proと比較してみたが、最高温度も平均温度も最も低い結果が表れた。なお、最高温度は37℃、最低温度は28℃。ヒザにのせて使ってもそれほど熱く感じることはないはずだ。


(次ページに続く)

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