塩澤一洋の“Creating Reed, Creative Mass.──大公開時代の羅針盤” 第15回
塩澤一洋の“Creating Reed, Creative Mass.──大公開時代の羅針盤”
音楽・写楽・楽校・楽問
2008年08月31日 15時00分更新
従って著作権法は、鑑賞と創作のサイクルを鈍らせることがあってはならないと同時に、そのサイクルを回す力となることもない。期待されているのは文化を発展させるためのインフラとしての役割なのである。
すると、実際にこのサイクルを循環させるのは、法制度ではなく、社会的な仕組みだ。「楽しさ」を原動力として回る仕組み。中でももっとも重要なのは、学校である。
教師は、過去の人類の英知を素材として提供し、児童・生徒・学生は、それを鑑賞し、学んで(マネて)いく。「学習」というプロセスだ。ひとつのテーマについてひと通り学んだら、さらに自ら新たな創作ができるように訓練する。友人たちの表現を見て、また学び、自分の表現の幅を広げる。こうして鑑賞と創作を繰り返すことによって、そのサイクルを自分のものにし、創造性を養っていく場が学校だ。彼らはそこで、マネするとともに自分らしさを表現する手法を身につけ、喜びを見出す。
そこで大切なのは、児童・生徒・学生たちが「楽しさ」を心から味わうことだ。鑑賞の楽しさ、学習の楽しさ、創造の楽しさを体感した彼らは、誰かに鼓舞されなくても、まして著作権法にうながされなくても、自ら学習し、自ら創造するようになるからである。こうして個々人が創造的であれば、社会全体がクリエイティブになる。
創造的で楽しい学校の教材には「楽しさ増幅装置」たるMacが好適だろう。しかし、道具より大切なのは、言うまでもなく教師の働きかけだ。学習と創造の楽しみ方や手法をさまざまな形で児童・生徒・学生に伝えていくのが教師の仕事だ。その核となるのは「ほめる」ことにある。教師に褒められることによって、彼らは楽しくなる。もっとやってみようという気持ちが強まる。
(次ページに続く)

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