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塩澤一洋の“Creating Reed, Creative Mass.──大公開時代の羅針盤” 第11回

塩澤一洋の“Creating Reed, Creative Mass.──大公開時代の羅針盤”

前進を続けるカルチャー

2008年08月03日 15時00分更新

文● 塩澤一洋 イラスト●たかぎ*のぶこ

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続けることに価値がある ウェブは進歩のフロンティア


 道は人が移動するところだ。だから道の上では、人々が前進し続けているのがデフォルトの状態である。従って道の機能は、人やクルマの流れを止めずできるだけスムーズに前進させること。そのためにはルールが必要だ。

 第一に、西に行く人と東に行く人とがぶつからないようにするためのルール。それが「右側通行」だ。次に、東西に行く人と南北に行く人との衝突を防ぐ、交差点のルール。これは「First come, first go.」。つまり、交差点に到着した順番で交差点に進入するというルールだ。

 現在でも、信号のない交差点ではすべて「First come, first go.」。完全に到着順に発車するので「阿吽の呼吸」は必要ない。発車の優先順位が客観的に定まるから、非常に安全だ。もし2台のクルマが交差点に同時に到達したら、先に交差点に進入する優先権は右側のクルマにある。右側通行を基礎とした横切り船ルールの応用だ。

 カリフォルニアでは信号機の故障をときどき見かける。しかし驚くことに、片側3車線もある大きい交差点で信号が故障しても混乱が生じない。すべてのクルマがこのルールに従って交互に発車するからだ。信号はなくても秩序が保たれる。にわかに信じがたいかもしれないが、これこそ前述の「ルールは信号以前に存在する」証拠だ。

 かつてこのようにシンプルなふたつのルールで動いていた交通に信号機が導入されて、秩序の性質が変化した。それまで自律的に機能していた交通秩序の中に、強制的に一定時間停止させる赤信号が登場したのだ。


(次ページに続く)

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