仕事柄いろいろなモバイル製品に触れる機会があるが、本当に満足できるノートに出会えることは少ない。
パソコン雑誌の編集者という仕事を始めてからかれこれ10年が経つ。その間にパソコンの技術は大きく進化を遂げていて、明らかなハズレを引くようなケースはほとんどなくなった。
それでも何となく疎遠になってしまうノートはある。それはキーボードの操作感だったり、画面の映り込みだったり、デザインだったり、大抵の場合、些細なことだったりするが、突き詰めて使っていくうちに、何となく違和感というか、ちょっとしたフィーリングの違いを感じる製品というのがあるのだ。
それはスペックというよりは、エクスペリエンスの問題と言えるかもしれない。パソコンの最大にしてもっとも重要なファクターは長い間「速度」であったが、時代とともに価値の基準が変わってきている。モバイルという時点で、何らかの割り切りが必要なのは同じだが、プレミアムモバイルという国産ノートのジャンルでは、何かを捨てる口惜しさを感じずに済む程度の「死角を感じさせないスペック」が確保されている。
最後の砦は、満足感。仮に高い金額を払っても、それを上回る愛着を持てるかどうか、それがモバイルノートを選ぶ基準になっているのかもしれない。
常時接続とSSDでモバイルは進化する
編集部に富士通の「LOOX R/A70N」が届き、比較的長期に渡って試用することができた。店頭販売モデルに関しては、筆者の西田宗千佳氏が当サイトの連載の中で、細かく評価している(関連記事)。文中「スイートスポットに入った国産ノートPC」という表現がある。一見地味に見えるが、携帯性、パフォーマンス、ユーザビリティーのバランスが高い次元で取れている本機の特徴を上手く言い当てているように感じた。
LOOX R/A70Nは、国内でモバイルノートでは主流の12.1インチワイド、重量1.2~1.29kgのノートである。天板はグロスブラック。同社直販サイトの「WEB MART」では昇華転写という技術で実現された、柄入りの天板も選べる。こういったCTOメニューが用意されるのは、ノートでもすでに当たり前になっているが、本機の場合、スペック面でのカスタム性も充実している。
CPUこそ低電圧版のCore 2 Duo SL7100(1.2GHz)に決めうちだが、メモリー容量やHDD容量、通信機能、ディスプレーのタイプなどは選択肢が多く、自分の好みに合った構成を追求できる。CTOと言うと、予算に合わせてスペックを削っていく作業になることが多いが、今回は幸運にも約64GBのSSDに、HIGH-SPEED対応無線WAN機能(NTTドコモの定額データプラン対応 受信最大7.2Mbps)を搭載したハイエンドに近い構成のマシンが手元に届いた。
SSDは容量こそ少ないが、低消費電力で耐衝撃性が高く、しかも高速という、モバイル機にとっては理想的な記録媒体。これに屋外であれば、筆者の行動範囲のほとんどの場所をカバーできる高速な常時接続環境が加わる。


