塩澤一洋の“Creating Reed, Creative Mass.──大公開時代の羅針盤” 第10回
塩澤一洋の“Creating Reed, Creative Mass.──大公開時代の羅針盤”
表現は「動」
2008年07月27日 15時00分更新
変化が人を引きつける だから表現の秘訣は「動」
大公開時代は「表現」「公開」「共有」の時代。それは見方を変えると「動」の世界だ。動の視点に立つことができれば大公開時代を理解しやすいし、この時代にマッチした表現ができるようになる。そこで今回は、表現の「動」について、プレゼンを例にとって考えていこう。
1月の初旬、米国のサンフランシスコでは毎年マックワールドエキスポが開かれる。私も'07年の初日に行われるスティーブ・ジョブズの基調講演を見に行く機会に恵まれた。その映像はiTunes Storeで配布されているので、ぜひご覧いただきたい。
Apple TV、iPhone、「Apple Inc.」への社名変更と、重要な発表が盛り込まれた2時間。聴衆の気持ちを高揚させ続け、心地よい余韻も残す。理想的なプレゼンのひとつだ。また、途中でジョブズが握っていたリモコンにスライドが反応しなくなったときも、機転を利かせて即座に昔のエピソードを披露。聴衆の笑いを引き出して会場を和ませるとともに、舞台裏が不具合を解消する時間をかせいだ。ジョブズのプレゼンは、エンターテインメントとしても一級のパフォーマンスである。
誰だって魅力的なプレゼンをしたいものだ。ジョブズのように聴衆を引きつけるパフォーマンスができたら大成功。その秘訣はどこにあるのだろうか。
プレゼンを魅力的にする要素はいろいろある。明解なメッセージ、内容の面白さ、話の展開の妙、話者のキャラクター、軽妙なテンポ、的を射た落としどころ……。
大切なのはこれらの要素を貫くポリシー、それが「動」だ。初めから終わりまで常に変化を続けると、プレゼンが「動」を基礎としたパフォーマンスになる。
変化はチカラだ。変化し続けることによって魅力が増幅する。登場するたびに異なる服を着こなすタレントのファッションには注目が集まる。作って終わりのウェブページよりも、日々更新されるブログのほうが人を呼び込むチカラがあるのは明らかだ。アップルはときに、製品が売れているにもかかわらずそのデザインをがらりと変えて人々を驚かすが、これはアップルが提案する「Think different.」を自ら実践していることにほかならない。
(次ページに続く)
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