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ジェネラルパーパス・テクノロジー(後編)

大企業の消滅で、日本は生き残れる──野口悠紀雄が語る

2008年07月22日 11時00分更新

文● 遠藤諭、語り●野口悠紀雄、撮影●パシャ

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ITによって世界地図が変わってきている


野口 (前編で述べた)イギリスの話に戻ると、イギリスは、製造業に適した社会に変わったかといえば、変わらなかった。過去10年間、イギリスの経済は非常に好調です。しかし、製造業が復活したわけではない。

── おっしゃっているのは、イギリスは、製造業にたずさわる人口よりも、金融や不動産にたずさわる人口のほうが多い。モノを作っていないとさえいえる、ということですね。

野口 イギリスの隣にあるアイルランドは、2段階飛び越えたといってよい。ついこの間までは農業国だった。ジャガイモしかできなかった。イギリスより前の段階から飛び越えて、先進的な情報産業の国になった。そして、いまやイギリスより豊かな国になっている。アメリカよりも豊か。日本より1.5倍くらい豊か。しかし、それを知っている人は、日本には少ない。あのアイルランドがこんなに豊かになったということには、われわれの感覚がついていけない。

 話が少しそれますが、アメリカの映画は、だいたいアイルランドからの移民、つまりアイリッシュ・アメリカンが作ったのですね。だから、彼らの社会的な地位を知らないと、アメリカ映画は理解できない部分がある。たとえば、このあいだアカデミー賞を沢山とった「ミリオンダラー・ベイビー」。あの映画の主人公は、アイリッシュ・アメリカンなので、ボクサーになるしか生きる方法がなかった。「アイリッシュ・アメリカンはどうしようもなく貧しい」ということが前提になっており、その前提なしにはあの映画を理解できない。いま、あの映画は理解できないものになりました。このように、驚天動地の変化が起きている。

── 以前、お話をうかがっていたときに、ITによって世界地図が変わってきているという話がありました。国際的な分業というのか、ITの生かし方も違うわけじゃないですか。ルクセンブルグみたいなところも頑張っているし、北欧は携帯電話系でやっている。中国は製造でやっている。インドはソフトでやっていて、オフショア的だったものが半導体の設計も7割くらいインドになったとか。国際的な分業みたいなことが出来上がってきているということだと思うのです。そういうことをITとの関係で見直すとどうなるのですか?

野口 その意味で言えば、日本が取る道とは何か、日本の得意分野は何かを見出すことでしょうね。

── イギリスと同じである必要はないですが、どういう道でしょう?

野口 それが分かったら自分でやりますよ(笑)。

── どの辺なんですか? だって可能性はあるわけでしょう。アイルランドは2段階飛び越えてんだったら、日本はもともとキャパがあるんだから飛び越えられるとしたらどこなのかというのを見なくちゃいけないということですね。

野口 私は、しばしば次のように考えています。日本は産業革命でイギリスに100年遅れた。しかし、日本は1980年代にイギリスを追い越した。ITで遅れたといっても、たかだか20年間の遅れですね。100年の遅れを取り戻して追い越したことがあるのだから、20年の遅れくらいは取り戻せるのではないか?

── でも、ITの世界はドッグイヤーと言われますから、7とか8を掛けてやらないといけない。

野口 7×20年だと、遅れは140年ということになりますか。

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