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経済予備校 第3回

原油高騰~消費者への影響はこれから始まる~

原油高 おさえておきたい基礎の基礎

2008年07月22日 04時00分更新

文● 金山隆一、稲垣章(大空出版)

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原油高の背景

日本総合研究所 岡田哲郎氏

岡田哲郎氏
日本総合研究所
マクロ経済研究センター所長 主任研究員

日本総合研究所

 これまでにも中東などで紛争がある度に原油は急騰した。今回はこれに加え、人口13億人を抱える中国など、新興国の経済成長で世界のエネルギー需要が拡大し、原油の価格を押し上げている。しかし、日本総研の岡田哲郎氏は「地政学的リスクや新興国での需要急増は今回の高騰の1つの要素に過ぎない」と指摘する。過去の新興国の需要増の実績と原油の値動きの相関関係を見ると、最近の急上昇は説明できないからだ。

「原油価格にはドル安、米国経済の失速懸念、投機マネーの流入などの要因が絡み合っています」(岡田氏)

■原油高のからくり──基本──

 原油価格はドル建てで決済される国際商品のため、ドルで表示される。したがって、原油そのものの価値が変わらない中で、ドルが他の通貨に対して安くなれば、ドル建ての原油価格は高くなる。実際の取引行動に当てはめると、ドル建て取引で販売収入が減少する産油国は、実質的な価格を維持しようと、ドル建ての価格を押し上げようとする力が働く。これがドル安が原油高に結びつく基本的な理屈だ。

 通貨ドルは、そもそも米国に巨額の経常赤字と財政赤字があるにも関わらず、過大評価されてきた。そこに2007年夏、サブプライムローン(信用力の低い個人向け住宅融資)問題が発覚して、金融市場が混乱、米国のGDPの7割を占める個人消費を押し上げてきた住宅ブームが終焉した。これが実体経済にも深刻な影響をもたらし始め、ドル安・原油高へとつながっている。

 さらに米国の株式や債券、デリバティブ(金融派生商品)など金融商品の魅力が低下。金融商品に流れていた巨額のマネーが、新興国の成長で今後需要拡大が見込める原油や銅などの鉱物資源、穀物などの実物市場に逃避していった。それがさらに原油価格を押し上げた、というわけだ。

 通常、投機マネーは安く買って高くなれば売るものだ。しかし、今回の原油高騰が長く続く背景には、年金基金の存在があると言われる。年金基金はいったん投資した商品を短期間で売買することなく長期間保有する。それが原油価格を押し上げているとみられている。

 ちなみに株式や債券など世界の金融資産の時価総額合計は2006年時点で約150兆ドル。これに対して原油や金、非鉄金属、穀物などの商品市場は年間取引高でわずか10兆ドルに過ぎない。金融商品からわずか1%のマネーが商品市場に流れるだけでも、すさまじいインパクトがあるわけだ。このため、一部の投資銀行は現在147ドル(2008年7月)にまで達している価格は、1バレル=200ドルまで高騰する時代が到来するとの予想を発表している。

■意外に知られていないポイント
世界生産の3~4%に過ぎない「WTI」がなぜ指標になるのか?

 メディアで「1バレル(バレル:体積を表す単位)=145ドルを突破」などと表示されることが多い原油価格。その指標となる価格はWTI(ウェスト・テキサス・インターメディエート)で表示されることがほとんどだ。WTIは米テキサス州で産出する低硫黄の軽質原油のことで、ニューヨークマーカンタイル取引所(NYMEX)において原油先物取引の対象として上場されている。現在WTIは原油価格の指標であり、かつ世界経済の動きを占う経済指標となっている。

 しかし、実際のWTIの生産量は1日当たりわずか30万~40万バレル程度で、世界生産の3~4%に過ぎない。しかも国際的に取引されているわけでもなく、米国内のパイプラインで特定地域のみに供給されている。そのWTIがなぜ国際指標となるのか。

 公開市場で先物取引されている原油は、他にも英領北海のブレント原油や、中東産のドバイ原油もある。しかしWTI市場は投機筋が参加しやすいため、市場参加者の数や取引量が圧倒的に多い。1日の取引量は実に1億バレルを超えるとも言われている。このためブレントやドバイの価格もWTIの影響を受ける。WTIが世界の原油価格に圧倒的な影響力を持っていることから、世界的な指標となっているわけだ。

(次ページ、「原油高騰、長期化の理由──いったいいつまで続くのか」へ続く)

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