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ジェネラルパーパス・テクノロジー(中編)

ITを使えない日本は、ソ連のように崩壊する──野口悠紀雄が語る

2008年07月17日 11時00分更新

文● 遠藤諭、語り●野口悠紀雄

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役割を明確にしたクライアント・サーバーシステム


── 今回の本の中で、クライアント・サーバー型システムが登場してきたということを非常に重要な出来事として書いてあります。LAN(ローカルエリアネットワーク)で何ができるかについて、日本人は、きちんと認識することができた。部署内でワープロやエクセルを使うときに、ファイルを共有したり、プリンターを共有したりというのは便利に使っていた。ところが、クライアント・サーバー型システムは、単にPC同士がつながるということじゃない。これまでと思想的にまるで異なる大きな変化を生んだわけですよね。

 サーバーに対して「サービス」を要求して、サーバーがそれに答える。コンピュータ同士を繋ぐ線の中を通してよいのは、サービスを要求する「コマンド」と、「サービス」が返す結果だけである。例えば、会社のメールアドレスに届くメールは、メールサーバーの中のメールボックスに蓄積されていくわけです。そこに対して、「メールを読みたい」というコマンドを送ると、メールボックスの中にあるメールを読み出してくるというようなことです。たかだか、このようなサーバーの役割を明確化したことが、ITというものを本質的に進めたと思うのです。

野口 私も含めて普通の人がクライアント・サーバー型システムと付き合うことになったのは、インターネットを利用し始めてからですね。ところが、インターネットがどういう仕組みで動いているのかが、よく分からなかった。だから、サーバーという言葉には接したけれども、それがどういう機能を果たしているのか、インターネットがどういうふうに動いているのかが、ずっと分からなかったのです。

── 今回、そうしたことも書いていますが、インターネット上にあるウェブやメールなどのシステムにブラウザーやメーラーでアクセスする。これがまさにサーバーとクライアントの関係です。要するに、インターネットの小さいのが社内にもあるというと理解が早い。

訂正とお詫び:読者からの指摘を受け、本文を一部修正しました。(7月21日)



社会構造が変わらない、だから新しい技術に不適合となる


── 実際には、企業の中にはさまざまなシステムが動いていて、それを積み上げていくと、話はとても複雑になってしまいます。そこで、「最も重要な概念はクライアント・サーバー型システムである」というふうに、ここだけに絞って理解してもらおうとしています。

 おそらく日本の平均的なビジネスマンの理解は、実は、ここまでいっていないのでばないかと思うのですよ。たかだかワークステーションやPCでネットワークを組むことだろうというくらいに、たかを括っているビジネスマンが多いのではないでしょうか?

 そこで、この本の2章は、ほとんどITの教科書のようになっています。メインフレームのような旧来型の情報システムから、PCやワークステーションやネットワークによって、ITがどのようにして成立したかが書いてある。このように手順を踏んでみると、いま何が起きていて、これから何が起こるかさえ見えるようになってきます。


野口 少なくとも日本では、経済システムにおける計画経済と自由経済の違い、そして情報システムにおけるメインフレーム型の集中処理とクライアント・サーバー型の分散処理の違い、それらが非常に似たものだという認識は、あまりないと思います。だから、日本型の社会構造は、簡単に変わらない。簡単に変わらないから、新しい技術に不適合になっている。



アメリカもかつては中央集権的だった


野口 ひとつ付け加えないといけないのは、アメリカにおいてすら、1950年代、1960年代には、中央集権化が進んだということです。アメリカ経済は、本来の市場経済的なものから、ソ連型の経済に近付いた時期があるのです。まず、連邦政府の役割が大きくなった。企業においても、大企業が力を持ってきた時期がある。AT&T、IBM、GMのような巨大企業が経済の中心になった。

── そうした企業は垂直統合的なやり方をしていて、この本にもGMのような自動車会社がタイヤのためにゴム園までやっていたという話が出てきますね。アメリカは、なぜそこから変わることができたのでしょう?

野口 そこが面白いところですね。アメリカにも、いまでもそうした企業が残っているわけです。アメリカは、一括りにするわけにいかない国なのですね。ニューヨークやデトロイトには、そういう企業が残っている。

── 五大湖周辺とか、クリーブランドなんかそういう化石みたいなところらしいですよね。もう1950年くらい経済が上向いたことがないと聞きました。

野口 1980年代にデトロイトに行ったことがありますが、廃墟のようでした。GMの巨大がビルがそびえ立っている。しかし、その周辺は寂れていました。

── アメリカには、多様性があるということですかね? 特にシリコンバレーなんかは、世界中の人たちが集まってきている。

野口 特にカリフォルニアはそうですね。

── しかし、日本にはそのような多様性がなく、したがって変われずにいるということですね。

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