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『仮想化』――いま何が起こっているのか/VMwareに訊く

脚光浴びる10年選手・VMwareの強み――ニッチから表舞台へ

2008年07月31日 14時02分更新

文● 大川 淳、小橋川誠己/ASCII.jp

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VMwareの今後――さらなる信頼性向上へ


 これからのVMWare、そして仮想化はどのような方向に進んでいくのでしょうか。

 VMwareは今後、仮想環境をより安心して使えるように、信頼性をさらに向上させる計画です。「システムを仮想化し集中化させたことで、仮想化環境全体をまとめてセキュアにしたいという要望や、将来起こりうる可能性を否定できないハイパーバイザー自身へのセキュリティアタックに対する要望があります」と名倉氏は説明します。

 そこで今年2月、VMwareは新たなセキュリティ技術「VMsafe」を発表しました。VMsafeは、ハイパーバイザー層(ハードウェアとOSの中間層)で動作し、仮想マシンの挙動を監視してマルウェアを検知する技術です。VMsafeのAPIを使ったセキュリティ対策ソフトが、シマンテックやマカフィーなどから提供される予定です。

 稼働率の向上も信頼を高める重要な要素です。先述のように、ハイパーバイザーエンジンの安定稼動に自信を持つVMwareですが、仮想化環境全体の稼働率を向上させるべく、従来から提供している「VMware HA(High Availability)」の機能強化に取り組んでいます。最新版では、障害検出時に仮想マシンを自動で再起動させる機能も試験的にサポートされました。

 ごく最近では、環境に配慮したIT化を標榜する「グリーンIT」の観点からも、仮想化技術が注目されています。電力消費量の多いデータセンターに仮想化技術を導入し、消費電力を削減する狙いです。今後、グリーンITが仮想化導入のきっかけになるのではないかいう意見もあるほどです。

「米国では、電力会社が仮想化を奨励しています。たとえばカリフォルニアでは、サーバの数を減らすために、仮想化技術を導入した企業に奨励金を払う例さえあります。電力会社が環境問題への対策を、一般企業と協力しながら進める動きが出はじめているのです」(三木社長)

 残念ながら日本ではまだ米国のような奨励金の仕組みはありませんが、今後、同様の取り組みが導入されれば、運用コストの削減を超えたより直接的なメリットを、ユーザー企業が得られるようになるでしょう。そして、仮想化の導入はますます促進され、VMwareと競合他社との技術開発合戦もまた、熱を帯びてくる――。そうした競争の中から、仮想化の新たな潮流が生まれてくるのかもしれません。


「Fusion」を作る理由――開発リソースは一つ


VMware Fusion

「VMware Fusion」。VMwareはサーバ向けを事業の柱とする一方で、コンシューマ向けのデスクトップ製品も開発・販売している

 現在のVMwareは、サーバ用途の仮想化技術を主力としていますが、その一方で、Mac OS上でWindowsを実行できるコンシューマ向けの「VMware Fusion」も市場に投入し続けています。仮想化技術の開発という意味ではサーバ用途もコンシューマ用途も大きな違いはなく、仮想マシンの動作記録機能のように、先進的機能をまずコンシューマ用途の製品に実装し、機能の安定度などを見計らってからサーバ製品に採用できるメリットがあるからだといえるでしょう。

 「パソコンもインフラを構成するリソースであり、全体で一つのソリューションになっているのですから、コンシューマ用途の仮想化技術も重要だと考えています」(ヴイエムウェアの名倉氏)

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