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『仮想化』――いま何が起こっているのか/VMwareに訊く

脚光浴びる10年選手・VMwareの強み――ニッチから表舞台へ

2008年07月31日 14時02分更新

文● 大川 淳、小橋川誠己/ASCII.jp

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 仮想化技術の先頭ランナーとして走り続け、市場全体を牽引しているVMware。VMwareはなぜ強く、他社とどこが異なるのか。同社の日本法人、ヴイエムウェア(株)に訊いてみました。

三木泰雄社長

ヴイエムウェア代表取締役社長 三木泰雄氏


ワークステーションから始まったVMware


 1998年に設立された米VMwareは、翌99年に初の製品「VMware Workstation」を世に送り出しました。今日ではサーバ向けの仮想化ソフトを主力とする同社ですが、最初に手がけたのはワークステーション向け。VMware WorkstationはさまざまなOSを仮想的に実行するための“エミュレータ”として、ソフトウェア開発における動作検証などに用いられました。

 2000年には、サーバ向けの「VMware GSX Server/VMware ESX」も発売されますが、当時はサーバのマシンパワーの限界もあり、今日ほど大きな注目を集めるには至りませんでした。2000年前後のx86コンピュータにおける仮想化は、ワークステーションにせよサーバにせよ、ニッチな領域に過ぎなかったのです。

VMware

VMwareが創業当初から開発・販売している「VMware Workstation」。画面は、昨年リリースされた最新版「VMware Workstation 6」

 それから数年を経た今、x86コンピュータの仮想化は、エンタープライズ分野の主役になっています。IDC Japanが2007年12月に発表したレポートでは、2011年までの国内仮想化ソフト市場の予測成長率は39.8%。今年5月の同社のレポートでは、2011年に国内サーバ市場の39.4%(台数ベース)が仮想化技術を導入したサーバになるだろうと予測されています。

 こうして、ニッチな技術だった時代から「x86コンピュータの仮想化」に着目し、専業ベンダーとして取り組んできたVMwareは、仮想化への注目が高まるにつれ、その先見性を評価されるようになったのです。


ハードとソフト、両者の「格差」を埋める仮想化


 ではなぜ今、仮想化が注目されるようになったのでしょうか。米VMwareの日本法人、ヴイエムウェア(株)の三木泰雄社長は「ハードウェアとその上に載るソフトウェアとのバランスが崩れたため」と指摘します。

 低価格で手軽に導入できるx86サーバは、安定稼動環境を維持するため、1用途・1サーバで使うのが常識でした。新たなサービスを立ち上げるのであれば、新たなサーバを購入するのが当たり前だったのです。

 ハードウェアの性能とソフトウェアの要求との均衡が取れていたころは1用途・1サーバで問題はありませんでした。しかし、CPUのマルチコア化・64ビット化が進み、処理性能が急速に向上していくと、大幅なハードウェアリソースが大幅に余るようになりました。「CPUの使用率は数%に下がっているのに、サーバの台数は増え、運用管理が困難になっていったのです」と三木社長は説明します。

 さらに、データセンターや企業のオフィスが集中する都心の地価・人件費の高騰、世界的な原油高による電気代の値上げなどを背景に、サーバ1台あたりにかかる維持コストは年々増加傾向にあります。そこで、増え続けるサーバの管理とコストの問題を一挙に解決する方法として、仮想化による「サーバ統合」への関心が高まってきたのです。

 仮想化でサーバを統合することで、物理サーバの台数は劇的に減らせます。たとえば「VMware ESX Server」のユーザー事例では、100台程度の物理サーバを統合することも珍しくないといいます。100台単位のサーバが数台のブレードサーバに置き換わることもあるといいます。「サーバはどんどん増えるもの」というこれまでの常識を覆し、むしろ減らせられるものだと示したのが仮想化であり、VMwareの存在だったといえるでしょう。

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