インダストリアルデザイナーに求められる能力
前述した「理に適った機能とデザインの整合性」を具現化した形を作り上げるためには、製品につながるさまざまな知識をはじめ、機転や応用力が必要だ。では、知識を仕入れ、アイデアを生み出すためには何をすればいいのか。
「最初は先輩から教わることも多かったのですが、それだけでは幅が出てきません。多くの製品に触れることが大切だと思います。例えば、私は家電量販店を回って『これは新しいデザインだ』と感じたものがあれば、それについて調べます。どんな材料で、どんな色を使っているのか。車やカメラのメーカーに直接問い合わせたこともあります」
常に多くの製品の持つデザインや素材に対する興味を持っていることが、インダストリアルデザイナーの必須条件ということだろう。その他に必要な技術には、どういったものがあるのか。
「今回のG'zOneの開発段階であったように、デザインと設計の折り合いが付かないことは、ままあります。デザイナーとしてはイメージどおりに作りたい、でも設計サイドは無理だと言う。そのようなときに、蓄えてきた知識が役に立ちます。情報量が多ければ、提示したデザインが無理ではないことの説得材料になりますから。ただ、どうしようもないケースもありますから、その場合は『では、こんなデザインではどうか』という代案を提示できるだけの引き出しは持っておくべきです」
製品のデザイン、特に外観はユーザの第一印象を左右する。インダストリアルデザイナーは、描いたデザインのポリシーを言葉にし、どこまで形にできるかを開発に携わる人すべてに伝えることも仕事のうちだ。
「開発の中で、デザインに対して譲れないことが、日ごろから心がけているのは『お客さんが買う気になるようなものを、自分もいちユーザの立場に立って描く』ということですね」
(次ページ、「どのようにインダストリアルデザイナーになれたのか」へ続く)
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