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西田 宗千佳のBeyond the Mobile 第7回

type Z 解体天国:妥協なきモバイルの真髄(後編)

2008年07月17日 16時09分更新

文● インタビュー●西田 宗千佳、構成●小西利明/トレンド編集部

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13インチ級のモバイルノートは、もっと評価されていい

――キーボードもディスプレーも広いですよね。私もSZを導入する前は、小さいキーボードのマシンを使うことが多かった。ところがSZをメインのモバイルマシンにしてからは、仕事をするモバイルノートのサイズは、一番13インチクラスというのが「いい感じだな」と分かってきました。

 そこは、我々が一番最初に目を付けたつもりなんです(笑)。でも、ようやくThinkPad X300やMacBook Airなど、「軽量でモバイルだけどキーボードサイズは要るよね」といったジャンルが、どんどん出てきたなと思っています。だから「先駆けを作ったのは我々だ」と、誇りに思っています。

――日本でモバイルノートが好きな方は、まだこのサイズの魅力に気付いていない面があって、ちょっと残念なんですよね。

 それは、そこまで行けなかった我々の責任でもあると思っています。だから今回はtype Zによって、「ほら、これに飛び込んでもらっていいですよ」と言えるものが、やっとできたと思ってます。

――日本の消費者が引っかかっていたのは、重さとバッテリー持続時間のバランスだと思うので、type Zはちょうどスイートスポットにきたんじゃないかな。

 目的によると考えています。例えば外回りの営業マンの方は、type Zよりも軽いtype Tやtype Gの方が向くでしょう。我々としては両方やりたいんですよね。

宮入 持ち歩く頻度の高い方は、小さいのを好む方もいらっしゃいますので。

――商品ラインアップとして、type Zがあれば、type Tはいらないとはならないですね。ただ、type Zのクラスに魅力を感じる方が、日本にはもっといていいと思っています。

宮入 そうなんですよね! 私が少し残念なのは、SZってワールドワイドでかなり売れた機種なんですけど、日本では比較的存在感が薄くて……。「3Dゲームができるモバイルマシン」みたいな尖った機種に見えてしまった。

 一方海外では、「オールパーパス(多用途)なビジネスマシン」として評価されて売れました。しかし、お膝元の日本でそういう評価を受けられなかったのが悔しかった

 type Zでそれを覆したいなという気持ちがありますね。


安いだけのパソコンは嫌だ

――根本的な質問なのですが、このご時勢に「すごく贅沢な仕様だけど高い」ノートパソコンって、消費者にどれくらい受けるとお考えでしょうか。

 消費者の中に、「性能はどうでもいいので安いのを」という声がある。特に小さいもので、性能は悪くても安い物をという考え方が増えてきているように思います。

 この商品は日本でも受けるでしょうが、やはり本来一番売れるのは北米だと思います。米国でもエグゼクティブに近いような方が飛びつくマシンだと。しかし、今の時期は、日米共に景気が下向きである。そう考えると、日米でこの価格帯のノートが今いけるのか? という疑問があるのですが。

森 泉さんとtype Z「ボタニカル・ガーデン」

森 泉さんとtype Z「ボタニカル・ガーデン」。女性が手にしても、「重い」という感じはしないだろう

 僕らがすごく思っているのは、ノートパソコンって持ち歩いて使ってもらうもので、その人のライフスタイルを反映するものじゃないですか。車と同じようなものです。type Zはそれを実現できる商品だと、私は思っています。

 今は世の中の流れが「低価格なUMPCでいいや」みたいになっている。あっちの方がある意味やりやすいんですよね。標準仕様に従って、標準部品を採用して安く作ればいい。でも、そういう流れだけに傾いてしまうことは、私たちノートパソコンを作っている人間としては嫌なんですよ(笑)。「ノートパソコンだからこそできる価値観」を、きちんと提示して勝負したい。その思いが、今回のtype Zにはあります。

 type Zの細かい部分のこだわりについては、そういうこだわりをなくしてしまうと、オーラがなくなっちゃうような気がするんですよね。

 「神は細部に宿る」って言うじゃありませんか。全体のレベルって、こだわりを通し抜いて始めてその域に達するもので、ほとんどが120%の出来だったとしても、1ヵ所70%があると、その商品全体から放つオーラは70%になってしまうのではないかと。

 そういう意識を皆で持って、今回はそこを貫けたなと思っています。

宮入 徹底的にね。商品論みたいなものをチームで共有して、細かいところも詰め込んでいくスタイルですよね。

――VAIOは今までも「妥協しない」というキーワードを、特にモバイルノートでは何度も使ってきたと思います。突き詰め方の度合いで言うと、今回はかなり満足できるレベルに達したとお考えですか。

宮入 現状、我々がなしえるものを、できるだけあきらめないで高い次元で両立していくという点では、非常にいいところにきたと思っています。

 毎回そう思ってるんだけどね(笑)。




筆者紹介─西田 宗千佳

1971年福井県生まれ。フリージャーナリスト。 得意ジャンルは、パソコン・デジタルAV・家電、そしてネットワーク関連など「電気かデータが流れるもの全般」。主に取材記事と個人向け解説記事を担当。朝日新聞、読売新聞、アエラ、週刊東洋経済、月刊宝島、PCfan、YOMIURI PC、AVWatch、マイコミジャーナルなどに寄稿するほか、テレビ番組・雑誌などの監修も手がける。近著に、「美学vs.実利『チーム久夛良木』対任天堂の総力戦15年史」(講談社)がある。


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