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日本のライフスタイルは変えた――次は世界だ

夏野剛氏が退社のワケを告白

2008年07月16日 04時00分更新

文● 石川 温、写真●吉田 武

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次は世界の人に貢献する ビジネスをやりたい

夏野剛氏

 とはいえ、このままアドバイザー的立場で終わるつもりはないようだ。

「何か大きなことを仕掛けたいとは思っている。次にやるときは限りなくトップに近い立場でやりたい。トップの立場に就くには、自分でなりたいといってなれるものではない。そういう機会が訪れないといけない。チャンスがあれば、みずから企業の経営やサービスの開発をしていく可能性はある」

 果たして、それはどんなことなのか。もしかして、新たな携帯会社でも立ち上げる気なのだろうか。

「業種は関係ない。日本は技術やノウハウにおいて、優れたものが多い。メーカーにも優秀なものはあるし、コンテンツでも世界に発信できるものはたくさんある。ところが、それらがきちんと活用できているかと言えば、全然できていない。日本のケータイはガラパゴスと言われているがひいき目無しで見ても最先端にある。でも、世界に出られない。コンテンツも同様だ」

 夏野氏は、日本企業が世界に打って出られない背景にあるのは、経営者たちの内向きの考え方が大きく影響していると指摘する。

「最大の原因はマネジメントにあると思っている。つまり、内側志向で長い間に同じ会社にいて、そういう人が経営者になっていく。すごい技術だけを持っている会社はたくさんある。そういった技術、コンテンツを世界に向けて発信できる仕事をしたい。そこに業種は関係ないと思っている」

 インタビュー中、夏野氏から「グローバル」という言葉が何度も出てきた。夏野氏が新しくやりたいことは日本国内ではなく、世界に目が向けられているのだ。

「(iモードは兆単位のビジネスゆえ)今からiモードを超えるビジネスを作るのは難しいのは確か。残っているのはグローバル。(iモードやおサイフケータイで)日本人のライフスタイル革命は起こしたから、これからは世界中の人たちに貢献するサービスやビジネスモデルを作っていきたい」

 NTTドコモで大きなビジネスを立ち上げ、日本人のライフスタイルを大きく変えた夏野氏。我々はどんな発想を持てば、そのような成功に近づけるのだろうか。

「月刊アスキーの読者ならば、少なくとも日本のITがいかに先進的であるかを知っているでしょう。なのに、なぜ世界で主流になれないのかを、僕自身も含めて、一緒に考えましょうとお誘いしたい。この状況って本当にもったいない。ケータイだけでなく、コンピュータも、日本はもっと世界で存在感があるべき。しかし、技術ではないものがグローバル化の邪魔をしてしまっている。それはマーケティングが原因なのかも知れないし、マネジメントが悪いのかもしれない」

 だが夏野氏は個人がもっと世界に視野を持つのが肝心であるとする。

「世界で主流になれないのは、IT業界に携わっている人、一人一人の自分に対する言い訳が原因でもある。『おれ、英語できないし』とか『うちの会社じゃ、世界に行けないし』とか。それぞれ、立場によって違うのだろうが、自分がやっていることは『アメリカや中国で通用するのか』というように考えるだけでも違う。みんな日本でしか考えていない。阻害している要素は自分に対する言い訳じゃないのかな。もったいない。もっと恐れずに世界を目指していくべきなんです」

 と、読者にエールを贈る。iモードを作った男は、グローバルな視点で次の20年を戦おうとしている。

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