「Web3.0はクラウド・コンピューティング、プラットフォームの時代」と唱えるセールスフォース・ドットコム(関連記事)。同社が提供する「Force.com」は、ビジネス・アプリケーションの開発者に何をもたらすのか。7月3日の開発者向けイベントに合わせて来日した米セールスフォース・ドットコムのプラットフォーム&デベロッパーマーケティング担当副取締役 アダム・グロス氏に話を聞いた。

米セールスフォース・ドットコム プラットフォーム&デベロッパーマーケティング担当副取締役 アダム・グロス氏
クラウドは業界全体の動き、
Force.comはエンタープライズにフォーカスする
――セールスフォース・ドットコムは、Force.comによって開発者にどのようなメリットを与えようとしているのか。単刀直入にお聞きしたい。
グロス氏 従来型のソフトウェアの開発モデルに較べて、はるかに簡単に、確実に成功を約束できるということだ。
ビジネス・アプリケーションを開発するためには、さまざまなリソースが必要だ。だがこれまで、必ずしもすべての開発者がリソースを用意できるとは限らなかった。それをWebブラウザだけを使って、世界中の開発者が、簡単に手に入れられるようになったということだ。しかも、開発したアプリケーションはすぐに展開したり、スケールできる。
開発者がアプリケーションを開発して市場に投入するためには、やらなければならないことがいくつかある。私自身も開発者としての経験があるが、自分自身の持てる力を100%とすると、うち80%をシステムの立ち上げやメンテナンスに費やさなければならなかった。そして残りの20%をやっと、新たなアプリケーションの開発に振り向けることができた。
そうではなく、関心のあるアプリケーションを作ることにエネルギーを注いでほしいというのが我々の思いだ。インフラのことは忘れて、おもしろくもない問題に頭を悩ませるのではなく、真にやりたいことに注力できるのがメリットだ。
――“インフラからの開放”は他社も訴えている。たとえば、ネットスイートやインテュイットが提供するプラットフォームはForce.comの競合になるのか。また、提携関係にあるGoogleもこの分野では競合のように見える。
グロス氏 強調しておきたいのは、クラウド・コンピューティングあるいはPaaSは当社だけの動きではなく、業界全体の動きだということだ。Googleをはじめとする他社の参入は歓迎すべきことだと思っている。今後、多くのベンダーが参入してくるだろう。
どこが競合かと問われれば、間違いなくクライアント/サーバモデルだ。つまり、SAPやオラクル、マイクロソフトとなる。我々がやろうとしているのは、ソフトウェアのモデルをインターネットに移行させること。そのメリットを訴えていくために、Googleともパートナーシップを結び、市場そのものを発展させようとしている。
将来的には、企業向けアプリケーションはすべてインターネットに移行していくだろう。当社はCRMアプリケーションを開発、提供しているが、あくまでもそれは出発点に過ぎない。今後は、当社以外のベンダーが、CRM以外のカテゴリでもアプリケーションを開発できるよう支援をしたい。その際に必要になる開発ツール、プラットフォームが「Force.com」だ。
――Force.comはどのようなアプリケーションの開発に向いているのか。他のプラットフォームとの違いを教えてほしい。
グロス氏 当社がフォーカスしているのは、「エンタープライズ・アプリケーション」だ。そのために必須となる、「データベース」「セキュリティ」「信頼性」の3つの要素を備えていることが、他のプラットフォームとの違いとなる。
開発に適しているのは、これまで.NETやJ2EE(Java 2 Enterprise Edition)がカバーしてきた分野になる。特に、データベースを使ったアプリケーション、より具体的にいえば、人事管理や財務管理といった分野が適しているだろう。
もう1つ重要なことは、Force.comが規模を問わないということだ。これまでの当社のサービスを振り返ってみても、従業員が数名しかいない小企業から、郵便局のような数万人規模の企業まで顧客がいる。規模の大小を問わず、まったく同じアプリケーションが利用できる。それがForce.comの新しいところだ。
