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キャリア・ピックアップ 第52回

ネット家電ベンチャー社長インタビュー・後編

日本の家電ベンチャー、異例の存在

2008年07月09日 04時00分更新

文● 稲垣章(大空出版)

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キャリアは「オタク」と「ITベンチャー」でスタート

 岩佐さんの前職は、就職先としての人気も高い大手家電メーカーのパナソニックだ。しかも、テレビやレコーダーといった家電の花形製品を手がけられる環境にいたという。先進的な家電を作ることは難しいとしても、その環境を捨てて起業を選ぶことは、常人には難しいように思える。岩佐さんのキャリア観は、どのようなものなのだろう。

「私のキャリアのはじまりは1998年で、立命館大学(理工学部情報学科)の学生の時です。オンラインゲーム雑誌『PlayOnline』やサイト『Yahoo Internet Magazine』『Impress Watch』など複数の媒体での執筆と、京都のITベンチャーでのプログラマやシステムエンジニアとしての仕事を掛け持ちしていました」

 執筆の仕事は、レーシングシミュレーターやフライトシミュレーター、ミリタリーゲームなどのレビューで、岩佐さんがそれらのオタクだったことがきっかけで始めたそうだ。ITベンチャーの仕事は、当時簡単なサイト作成が1本数百万円という時代だったことで、おいしい思いをしたという。

「例えば、社長が300万円で受けてきた案件を、200万円を自由に分配して作るように任せてもらっていました。1人で企画からコーディングまでやれば200万円を独り占めすることもできました。でも、それだと学校にも行けずに開発詰めになるので、私が企画書を担当し、仲間がプログラミングやコーディングを担当するなどしてこなしていましたね

 この時の経験で、プログラムを書いてイメージを具現化する仕事よりも、『このようなものがあったらいいね』というイメージを紙に落とし込む仕事の方が向いていると感じたという。

自動車にも興味があったけど……

 卒業後の仕事として興味を抱いたのは「インターネット+自動車」と「インターネット+家電」。そして、最終的に就職先に家電のネット連携の企画を一手に担うeネット事業本部があったパナソニックを選んだ。

「自動車も大好きだったのですが、自動車は1商品の開発スパンが長い。それでは、ビジネスマンとして脂が乗っている時期は20~30年しかない中で、5、6種類の商品にしか関わることができません。さまざまな商品のネット連携の経験を積みたいと考えていましたので、スパンがもう少し短い『インターネット+家電』を選びました

 実際にその思惑は当たり、2003年から退職した2007年までの約4年間に、デジタルカメラやテレビ、DVDレコーダーといった多くのネット連携製品の開発に関わることができたという。自分が必要と思うスキルセットをいわば順調に身に付けられたことが、現在の独立へと進む大きな力になったことは間違いない。

就職先を選ぶ際は、『この会社に入ったら、いつまでに、どのような経験を得られるのか』を見極め、目指す方向に必要な経験を積める会社を選ぶといいと思うのです。以前、自分のBlogに書いたネタですが、これからは『個人の力を高めるために会社というフィールドを利用する』という視点で、会社を選ぶ人が増えてくると思います」

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