ホコリと省エネの関係
千歳事業所内部の見学では、省エネルギー化に役立つ冷房設備や、クリーンルームが目を引いた。
工場内部ではプロジェクター用のTFT液晶パネルが製造されており、完成したパネルは長野県にある製造事業者の元に運ばれてフレームやケーブルなどを取り付けられたモジュールになる。さらにモジュールは中国にある製造工場に運ばれて、完成品のプロジェクターとなる。
TFT液晶パネルを製造するクリーンルームは、部外者の立ち入りはもちろん禁止。写真撮影も禁止という状況だったが、外から見学することはできた。
千歳事業所のクリーンルームでは、広い部屋全体を高いレベルで防塵処理するのではなく、実際にウエハーを製造、加工する機械と、ウエハーを収納して運ぶ箱(ウエハキャリアケース)内だけを高いレベルに保ち、部屋全体は低いレベルの防塵処理で済ませる「ミニエンバイロメント方式」を採用しているという。米AMD社なども、CPUを製造する独ドレスデン工場で同様の方式を採用している。
旧来の方式では、クリーンルーム全体をクラス1(1立方フィート中に0.5μm以上の粒子が1個)に保つ必要があったが、この方式では装置とキャリアケースだけをクラス1に保ち、部屋自体はクラス1000(1立方フィート中に上記粒子が1000個)で済ませているという。クリーンルーム内の装置間でウエハーを移動させる際には、クラス1に保たれたケース内にウエハーを移動させたうえで、天井のレールで移動するロボットがケースを持ち上げて運ぶ仕組みとなっている。
クリーン度の要求が高く、広い空間ほど、防塵のための空気清浄化設備が大がかりになるし、それを動かすエネルギーも多く必要になるのは自明だ。千歳事業所ではこの方式の導入より、クリーン度の維持に必要なエネルギーを30%削減できたという。クリーンルームの防塵処理は半導体や液晶パネルの製造歩留まりを上げるのに欠かせないため、省エネルギー化と防塵設備の簡素化は、製造コストの低減にも効果があるだろう。
空調の効率化も省エネの鍵
省エネルギーという点では、工場内の冷房設備の効率化も重要となる。千歳事業所では工場街に高さ27mもある巨大な円筒状の「蓄熱槽」を建設。夜間電力を利用して冷水を作り、温かい水と冷たい水が槽内で自然循環する原理を応用して、エネルギー消費を抑制しているという。
また、工場屋上にあるクーリングタワーは、冬期寒冷な北海道の外気を生かして水の冷却を行なっている。このクーリングタワーは屋内の熱を外に出すだけでなく、冷たい外気を内部に取り入れられるように、さらに雪で吸排気口がふさがらないように、独自の工夫が凝らされているという。
プリンターで作った浴衣を世界の学生にプレゼント
取材の行なわれた4日には、洞爺湖サミットに合わせて行なわれた、「ジュニア・エイトサミット2008」(J8)の参加者を歓迎するレセプションが、千歳市内で行なわれていた。
J8とは、サミット参加国(G8)など、世界各地の学生が集い、サミット同様に世界の問題を討議、提言をまとめてサミット参加首脳に提出するといった、学生版サミットである。千歳市内のホテルにて行なわれた歓迎イベントでは、エプソンのインクジェットプリンターで印刷、製作された浴衣や団扇が、参加した学生たちにプレゼントされた。
浴衣作りは、布地を貼り合わせたロール紙にエプソンの大判インクジェットプリンター「MAXART PX-7550」で印刷を行ない、印刷された布地を紙からはがして縫製するという手順で製作されたという。
ちなみにこの大判プリンターによる布地の印刷は、布製ののぼり(例えばパチンコ屋の宣伝のぼり)や応援団の垂れ幕などによく利用されているとのことだ。