ニコニ・コモンズは「コンテンツのためのSNS」
現在の利用ルールでは、素材を使う前に人同士の交渉から入るため、コミュニケーションのきっかけを作るところが障壁になることがあった。濱野氏は、「人と人との関係だから、マイミク申請じゃないですけど、ちょっとドキドキするとか、恥ずかしいというところがあったと思うんです」と言う。
一方、ニコニ・コモンズによる素材の共有では、どちらかといえば人よりもコンテンツが主役になる。濱野氏は、「人と人との関係というのは変わらないんだけど、サイトを見ていると、あくまでつながっているのはパーツ。コンテンツとコンテンツの関係」と評する。
素材の著作権者ではなく、素材自体に出演を頼む。そして作品を完成させてアップロードするときにIDを自己申告して、今度は作品とオリジナル素材との関係を結ぶ。こうして張り巡らされた素材と作品の関係は、まるでmixiの「マイミク」(友人登録した人々)のようだ。その状態を指して、濱野氏は「キャラや絵やBGMなど、コンテンツのためのSNS」と言う。
さらに濱野氏は、ニコニ・コモンズのメリットを観客に分かりやすくこう説明する。
濱野 何がいいのかといえば、結局、ニコニコ動画で今起きていることというのは、コンテンツの枠みたいなものを超えて、「初音ミクが今こんなにたくさん出演しているんだ」とか「こんなに引っ張りだこになっているんだ」ということがみんなで話せるわけじゃないですか。そういう関係が見えるようになるのが、ニコニ・コモンズなんだろう。
「言ってみれば、バーチャル芸能事務所のようなものになるのかもしれない、というのが僕の希望を込めたコメントです」(濱野氏)。なお濱野氏の個人ブログでは、「ちょww」Tシャツの制作意図などに触れられている。こちらも合わせて読むといいだろう。
不正投稿にはどう対応する?
ニコニ・コモンズにはさまざまな可能性があるとはいえ、ニコニコ動画でMAD人気が続くからには、著作権を持っていない第三者が、アニメやゲームの一部を素材としてニコニ・コモンズに不正投稿する可能性もある。また素材を使った側がコモンズIDを「自己申告」しなかったらどうなるのか、その辺りの対策はあまり詳しく解説されていない。
基本的には、ネットのクリエーターを「空気を読める大人」だと信頼し、運営していくことになるのだろうか。8月中旬のオープン後、ニコニ・コモンズがどれくらいクリエイターや企業を巻き込んでいけるのか、その行き先に注目だ。