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日本上陸目前! 話題の情報端末をしゃぶり尽くす

chumbyで遊ぼう!(後編)

2008年07月08日 18時55分更新

文● 玉津圭太

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9. chumbyが切り開く新たな地平

アンビエント・デバイスとしてのchumby

chumbyは、アンビエント・デバイスとしての可能性を秘めた家電製品だ。

アンビエント・デバイスは事前に最適化加工された情報を用い、認識的負荷を下げた状態でそれを表示、人間は一瞥しただけ、場合によっては意識して見ずとも視界の隅に入っただけで情報を引き出せるものと定義される。

Ambient Orb

Ambient Orb

市販アンビエント・デバイスの嚆矢は、OLPCで有名なニコラス・ネグロポンテ氏が役員を務める米アンビエント・デバイス社が2002年の会社設立時に発表した「アンビエント・オーブ」に求められるだろう。アンビエント・オーブは無線通信網によって配信される情報を受信し、内蔵されたフルカラーLEDのスペクトルにマッピングする機能を持っている。ある事象の趨勢を、色で表現するのだ。

例えば、ある株の銘柄の値動きをアンビエント・オーブにマッピングしたとしよう。値上がり傾向にあるときはより暖かな色に、値下がり傾向にある場合は冷ややかな色になる。すると、アンビエント・オーブを注視していなくとも、周辺視野内に置いておくだけで情報を受け取ることができる。

アンビエント・オーブをはじめ、アンビエント・デバイス社のその後の製品は、chumbyの担う役割を理解するのにとても役立つ。また、無線通信網から受信した情報を表示する能力を持った腕時計型デバイス「Microsoft SPOT」も非常に近い存在だ。

chumbyは、こうした思想を受け継ぐ存在だ。日常の中にさりげなく溶け込んで、我々の情報生活を支えてくれようとしている。アンビエント・デバイスとしての立ち位置を理解すると、改めてchumbyの使い方が見えてくる。

それは、次の2つの方針に集約される。
・電源を入れっぱなしにしたまま目に入る位置に置き、その存在を恒常化する
・一度設定を決めたら、いじらない

このように、PDAやスマートフォンとは正反対の、放置プレー的な使い方を前提にすると、chumbyの存在意義がまた強く立ち現れてくるのだ。


インフォメーションハーレムを築けるか?

日本では正規に入手することができないchumbyだが、(株)ジークスが国内での販売に乗り出すことになった(価格/時期未定)。本稿を読んでchumbyに興味を持った読者諸兄は、その動向に気を配りたいところだ。

最後に、実際にchumbyを手にするまでの経緯と、また手にしてからの感想を述べて終わろう。

筆者は、Mac OS XのDashboardウィジェットやGeekTool、Yahoo !ウィジェット、Microsoft Windows Vistaのガジェット、Windows MobileのToday Plug-in、Growl、Snarlなどの告知系アプリケーション、ティッカー、Emacsのモードライン上の情報表示など、日常に割り込むような形で受動的に情報を受け取ることや、その手段に対して関心を抱いてきた。

そうした環境やツールを活用して、デスクトップ、あるいはスタート画面に一大インフォメーションハーレムを構築しようと意気込むのだが、しばらくするとツルリとしたデスクトップに戻ってしまう。Growlなどの現れては消える系統のウィジェットは使い続けられるものの、それ以外の常駐系はだめ。作業の邪魔になり、つい消してしまうとそのまま忘れ去ってしまう。かといって、OS XのDashboardウィジェットは、ついぞ筆者の生活に定着することはなかった。存在を忘れてしまうのだ。

Windows MobileのToday Plug-inは、フリーズするとその原因がプラグインにあるのではないかと勘繰り、外して大抵そのままだ。Windows Vistaの新機能「Windows SideShow」は、希望をかなえてくれそうな興味深い技術だが、まだ離陸には至っていない。

自分の要求を満たす回答はないのか?

そこに飛び込んできたのがchumbyだ。chumbyであれば、普段の作業環境はそのままに、そうした情報の通知をさせられる。

chumbyはいい具合に生活になじんでくれる。視界のちょっと端辺りで、邪魔にならない程度に存在を主張している。まだ自分が気にする情報を表示するウィジェットがないので本格的な利用には至っていないが、長年夢見たインフォメーションハーレムを、いよいよ日常に定着させられる実感を覚えている。

日本での販売が始まれば、より日本人の生活に密着したウィジェットが登場するだろう。chumbyの、これからの展開からは目が離せない!


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