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ここが変わったWindows Vista 100連発! 第89回

【Vista 100連発 特別編】

Vistaの暗号化機能 BitLockerを本気で試してみた

2008年07月06日 12時00分更新

文● 小西利明/トレンド編集部

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パフォーマンス差はほとんどなし!?

 最後にいよいよパフォーマンス検証を行なう。検証したのは「Windowsログオンが表示されるまでの起動時間」「Crystal DiskMark 2.1による読み書き速度」「PCMark VantageによるHDDテスト」の3点だ。同じHDDを暗号化前と後でテストを行ない、パフォーマンス差がどの程度あるかを調べた。複数回計測を行ない、平均値を算出している。

 まずOS起動時間計測だが、グラフ1のとおり暗号化後の方が3秒ほど遅いという結果になった。前掲の写真のように、BitLockerで暗号化後は起動キーの検索と読み込みの処理が入る。起動中の画面に関連したテキストが表示されているのがほぼ3秒間なので、その分の時間が延びているだけかもしれない。

暗号化前と後のOS起動時間

グラフ1:暗号化前と後のOS起動時間。Windows Vistaのログオン画面が表示されるまでの時間を計測

 グラフ2は、HDDの読み書き速度を計測するフリーウェアのベンチマークソフト「Crystal DiskMark 2.1」による計測結果を比較したものだ。

Crystal DiskMarkによるパフォーマンス計測

グラフ2:Crystal DiskMarkによるパフォーマンス計測。単位はMB/秒

 見てのとおり、ほとんどの項目で暗号化前の方が速いが、その差は小さい。512KBリードと512KBライトでは、やや差がついている(7~12%)。暗号化処理による速度低下は、やはり多少はあるようだ。

 グラフ3はPCMark Vantageの「HDD Suite」テストの結果を比較したグラフだ。このテストでは、Vistaの起動やVista搭載アプリケーション(Windows Media PlayerやMovie Makerなど)を使った、実使用に近いシーンを想定したHDD性能計測を行なっている。

Crystal DiskMarkによるパフォーマンス計測

グラフ3:PCMark Vantageによるパフォーマンス計測。単位はMB/秒(HDD総合のぞく)

 グラフを見ると、ほとんどの項目で暗号化前が上回っているものの、その差は総合値で約3.2%、各項目別でも約2.7~8%程度と、誤差程度に止まっている。やや差がついた(約13%)「video editing using Windows Movie Maker」は、書き込みの頻度がほかのテストよりやや高いため、暗号化によるパフォーマンス低下が見えやすかったものと推測される。

 これらの結果を見るに、BitLockerによるHDD性能の低下は確認できるものの、ほとんどの場合は誤差レベルに止まると言えるのではなかろうか。


実用的な暗号化機能 エディションの制約はもったいない!

 以上のように、導入手段の改良されたBitLockerは非常に使いやすいHDD暗号化技術になっている。OSボリュームを暗号化すれば、鍵がない限り起動すらしなくなるので、盗難や不正な使用による漏洩の対策としても有用だ。なにより「USBメモリーが起動キーになる」という分かりやすさは魅力だ(起動キーや回復パスワードの安全な管理と、起動したあとの不正使用対策も必要なのは当然だが)。

 懸念点であるバックアップの可否や性能面のデメリットも、実用的な範囲と言える。実際に筆者は1ヵ月以上前から仕事用のノートパソコンにBitLockerを使用しているが、日常的な作業において、暗号化によるパフォーマンス低下を感じたことはない。

 BitLockerはHDD暗号化技術として非常に有用なものである。しかし、返す返すも残念なのは、使用できるエディションが非常に限られることだ。一般ユーザーにとってはUltimateを導入する以外に、BitLockerを使う手段がない。最近ではビジネス用途を重視したコンシューマー向けノートのOSに、Vista Businessをプレインストールしている製品も多い。こういうノートこそBitLockerが必要だろう。マイクロソフトにはBitLockerのより幅広い提供を求めたいものだ。

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