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【ASCII.jpまとめ】ダビング10

ダビング10が迷走した4年間

2008年07月03日 11時00分更新

文● 谷分章優/MIAU事務局長、広田稔/トレンド編集部

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2.論点


●ユーザーの利便性を損なっていないか?

 ダビング10はコピーワンスの緩和策として提案されたものだ。にもかかわらずアナログの時代と比べて利便性を損ねている点も相変わらずあって、これがAV専門家や消費者団体などから批判されている。特に論点となっているのは、メディア移行の制限だ。

一体型レコーダー

「VHSテープのコンテンツをDVDに移したい」というニーズを受けて、HDD/DVD/VHS一体型レコーダーも登場した。

 ビデオデッキ、DVDレコーダー、Blu-rayレコーダーと、録画機器が進化していく中で、古い機器で録画した番組を新しい機器で見られるように、メディア間でコピーしたいというニーズが出てくることがある。

 この場合、ビデオテープなどに録画したアナログ放送の番組は、コピー防止信号が含まれていないため、新しい機器と古い機器をつなぐことでコピー可能だ。一方、コピーワンスやダビング10の番組をDVDなどに保存した場合は、「コピー不可」となってしまうので、そこから別のメディアに番組を移動することはできない。そのため、新しい機器を買ったとしても今のプレーヤーも持ち続けなければならなくなる。

 ちなみにコピーワンスの緩和策としては、当初ダビング10ではなく「EPN」(Encryption Plus Non-assertion)が提案されていた。これは、コンテンツを暗号化しておくことで、その暗号を解読できる機器でのみ再生を可能にするという「出力制限あり」「コピー制限なし」の運用ルールだ。


●無料の放送にプロテクトをかける意味はあるのか?

 これも意見が分かれている。消費者団体などユーザー側は、コピー防止技術は不要との意見を出している。地上放送が「基幹放送」といって国民の生活に欠かせない情報を送り出していること、テレビ番組は最初の放送でCM広告料という対価をすでに受け取っているなどが理由だ。海外のデジタル放送で、この種のコピー防止技術がかけられていないという事情もある。

 一方で放送局や権利者側は、コピー防止技術は必要不可欠だとしている。その理由は、デジタル録画が複製しやすい性質を持っていて社会にコピーばかりを増やしかねないこと、テレビの広告料が伸び悩んでいて将来的に番組の二次利用によって収入の道を開くつもりでいることなどだ。

 現在のところは、ダビング10について議論している情報通信審議会のデジコン検討委員会で、地上デジタル放送に何らかのコピー制限(世代、枚数ともに制限する)は必要だとの前提が出されている。これは消費者代表も加わった場での見解であり、「無料放送にプロテクトをかけては国民がテレビを見たがらない」というせっぱ詰まった状況が起こらないかぎり、「無料の放送にプロテクトをかける意味」が問われる機会は訪れないだろう。


●パソコンでの視聴、録画を難しくしていないか?

今年4月、パソコン用の地デジチューナーが各社から一斉に発売された

 録画した番組をアナログ放送ほど自由に編集できないという点も、ユーザーから問題視されている。特にパソコンでは、そのデメリットが目に見えて現れた。

 パソコンでは、専用ソフトを使ってビデオ編集したり、デスクトップで録ってノートパソコンで見るといった、録画した番組をあれこれ活用できるメリットがある。しかしコピーワンス、ダビング10によって、そうした利点は制限され、例えばHDDに録画するとその録画したパソコンでしか視聴できなくなってしまう。ほかのパソコンで見るためには、DVDやBlu-rayディスクにムーブするしかない。


●「フリーオ」の存在をどうするのか?

フリーオの販売サイト

フリーオの販売サイト

 地デジをコピー制限なしにパソコンで録画できてしまう周辺機器「Friio」(フリーオ)の登場は、家電業界に大きな衝撃を与えた。

 現在、地デジの番組を見たり、録画するためには「B-CAS」カードをテレビやレコーダーなどに挿入しておかなければならない。これはパソコンでも同じだ。パソコンメーカーはB-CASカードを発行してもらうために、業界団体である社団法人電波産業会(ARIB)が求める著作権保護を受信機に用意しておく必要がある。これによりコピーワンスやダビング10が実現するわけだ。

 ところがフリーオは海外で生産し、個人輸入の形で持ち込むことによって、国内事情を無視して製造、販売することを可能にした。B-CASシステムを利用したコピー制限は民間団体の取り決めで、法律によって罰されるかは明確ではない。もちろんフリーオにB-CASカードは付属していないため、ユーザーは自分で用意したB-CASカードを挿すことになる。この行為はB-CASカードの利用規約で禁止されているが、こちらも法律で制限されているわけではない。

 フリーオの存在は総務省の会合(デジコン委)でも問題視されている。著作権保護のルールをいかに維持していくかについて、技術、法律の両面から議論している最中で、結論が出るまでにはしばらく時間がかかる。この委員会の頭越しで行政や国会が動かないかぎり、フリーオ対策はすぐには実現しそうにない。

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