とんでもないニュースだ。
日本で常温核融合らしき現象が確認されたというのだ。6月11日、北海道大学大学院工学研究科の水野忠彦助教は、ステンレス合金の炉の中に水素を封入。70気圧に加圧し、白金と硫黄を触媒に多環芳香族炭化水素の一種フェナントレンを0.1グラム投入して660度まで加熱した。その結果、加熱をやめた後も炉内の温度は700度まで上昇、通常の化学反応の100倍相当、すなわち240キロジュールの熱量と炭素の同位体である炭素13が大量に発生したという。
科学者さえダマされる疑似科学の代表格として挙げられるのが常温核融合だ。核融合といえば、1億度とかそういう超高温ですごい磁場をかけて起こす熱核融合が研究されているのだが、実は、それですらがまだ理論の域を出ていない。それなのに、1000度以下の低温(タバコの火だって800度もあるのだ)で核融合反応が起きるとされるのが常温核融合である。
1989年に最初に発表され、それ以降、世界中の科学者が追実験を行なったのに誰も成功せず、今では歴史的なダマしだとされている。以来、常温核融合は学会のタブー扱いをされてきた。
本当に常温核融合なのか?
「金属の中で核反応が起きる、いわば金属内核反応と呼ぶべき現象なんです」
と水野助教。それは常温核融合ではないんですか?
「呼び名は常温核融合なんですが、熱核反応とは別の物です。パラジウムや白金を触媒にして電気分解すると、今までなかった物質が出てくるんですね。燃料電池や金属腐食では、そのような従来の化学反応では説明できないことが起きるんですが、今回の実験でその説明ができると考えています。温度や圧力が高いと加速度的に反応が起きるので、核融合と呼べなくはないですが……」
すでに民間企業を中心に研究が進んでいる現象なのだそうだ。では、今までの科学がひっくり返るわけじゃない?
「今までのサイエンスの範疇です。超伝導のような現象だと思ってください。金属の中で起きるので、金属のどこで何が起きているのか、その機構を調べる必要があります」
常温核融合はオカルト科学の扱いですが、先生のお立場は大丈夫なんでしょうか?
「やる人が全然いないので、私ぐらい年とってくると、まあいいかと。一度傷つくとイメージ回復が大変ですよね」
常温核融合で未来のエネルギーが! ではなく、触媒に関する新しい知見が得られたとするのが正しいようだ。それにしてもすごいことで、水野助教の発見は新しい燃料電池の開発につながるかもしれない。誰か早く追実験して欲しい。
なお今回の実験結果は8月に開かれる国際常温核融合学会で発表される。
